昨季MLBデビューも… マイナーでもがく村田透、苦境から再挑戦

菊地慶剛

“準先発”から中継ぎへ

3Aでは苦戦中だが、再びメジャーでの登板へ向け奮闘を続ける村田(写真は2015年6月のもの) 【Getty Images】

 シーズン開幕後、やはり先発枠入りはできなかったが、普通の中継ぎ投手とも違う扱いを受けていた。昨年村田と同様に3Aで先発投手を務めていたベテランと2人で、中4日である程度のイニングを投げていく「ピギー・バック」形式という“準先発”として登板を続けた。

 ようやく開幕後にオープン戦登板のような調整をできるような環境に入り、短いイニングながら納得のできる投球ができるようになった。20イニング連続無失点を記録したのもこの頃だった。オフには米国挑戦後、初めてウインターリーグに参加せず、肩を休めながら投球の土台を見直すため身体づくりに力を入れてきた効果を感じるようにもなっていた。

 しかし5月が終わると、ビギー・バック形式で回っていたもう1人のベテラン投手は解雇され、村田も完全にブルペン待機となり、本格的な中継ぎに回ることになった。その辺りから自分の投球を崩してしまう。6月は5試合に登板し、防御率7.04と数字の上でも明らかだった。

「ピギー・バックの時はイニングが短いながらも投げる日が決まっていましたけど、中継ぎ待機になってから準備する難しさというか……。自分のフォームが崩れてしまいました。暖かくなり始めてバッターの調子が上がってきたというのもあるでしょうし、自分の投球スタイルを相手がわかってきたというのもあると思いますし。まだ自分でもしっかり把握できていないですね」

微調整を続け、ようやく先発の一角に

 だが昨年シーズンを通して安定した成績を残せたのは、自分の投球を冷静に分析しながら調整できる“修正力”があったからに他ならない。中継ぎになったとはいえ、自分なりに微調整を続けた。

「いろいろな投げ方を試して、しっくりくるようになってきました。フォーム的にちょっとずれているというのもありますし、(登板が)短いイニングだったので自分の中では(まだ感覚的に)分からないまま終わっている部分がありました。練習の時に、試合のために力をセーブしたりして、そこで登板間隔が空いて余計におかしくなったりとかもありました。それはそれで勉強になったから良かったんじゃないですかね」

 7月に入り、他投手の昇格等の影響で先発の谷間ができ、1日、17日とスポットながらようやく先発登板できた。そして最近になって先発枠に空きが生まれ、ついに首脳陣からしばらくは先発投手として起用されることが通達された。その最初の登板となった28日のノーフォーク戦では、まだ通常の先発投手のように球数が投げられないこともあり43球に留まったが、4回を1安打無失点と上々の投球を披露した。

 もちろん現在も先発陣の中で最も弱い立場にあり、他の有望若手投手の状況次第で真っ先に先発枠から外されることになるだろう。だからこそ、今シーズン初めて与えられた先発枠入りというチャンスで、村田は自身の存在価値をあらためてチームに知らしめるしかないのだ。それができなければ現在の境遇に甘んじるしかない。

「インディアンスは地区首位を独走している状態。ここで自分が結果を残せば9月に(メジャーに)呼ばれるかもしれない。何かあった時に必要かなと思われるような投球をするしかない」

 マイナーの残りシーズンは1カ月。まさに村田のプライドをかけた戦いに刮目(かつもく)したい。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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