松井が大活躍のオールドタイマーズ・デー 過去に感謝し現在を祝福する一日
古き時代に思いを馳せる特別な時間
談笑するルー・ピネラ(右)とウィリー・ランドルフ 【Getty Images】
今年もジョー・トーレ、リッチ・ゴセージ、レジー・ジャクソン、リッキー・ヘンダーソン、ホワイティ・フォードといった殿堂入り選手をはじめ、多くの元スターが一堂に会した。ルー・ピネラ、オニール、バッキー・デント、ウィリー・ランドルフといった人気者も参加。レジェンド、スター選手だけでなく、ババ・クロスビー、ジェフ・ネルソンといった渋い脇役たちまでロースターに含まれているのも興味深いところだ。
オールドファンにとって、古き良き時代、あるいは自らの青春時代に思いを馳せる特別な時間になる。そして、多くが現役時代を遠く離れたOBにとっても、間違いなく貴重な一日のようである。
「オールドタイマーズ・デーは1年の中で私が最も楽しみにしている日なんだ。過去の仲間や、伝説的な名選手たちに会い、話すことができる。時間はあっと言う間に過ぎ、私ももう最年長の部類になってしまった。この歳でファンから拍手をもらえるなんで本当に素晴らしいよ」
1970年代にはヤンキースの一員として優勝を経験し、マリナーズの監督としてはイチロー、佐々木主浩らを率いたピネラも笑顔でそう語る。
松井とコーンの間にあった“因縁”
豪快な一発を放ち、両手を広げて歓声に応える松井 【Getty Images】
「(招かれるのは)名誉なことですよ。ファンの方が覚えてくださっているだけでも、幸せです。(自分が活躍したのも)もうだいぶ昔の話ですから。もっと昔の人もいっぱいいるけど(笑)」
伝統球団にとって現時点で最後となる2009年の優勝に大きく貢献した松井も、そう語って表情を緩ませた。12年に現役引退以来、今年が2年ぶり2度目の出場。今後もニューヨークに住み続ける限り、背番号55 もオールドタイマーズ・デーの常連的な存在となっていくのだろうか。
「まだ日本でプレーしていた頃、1999年のシーズン後にプレーオフを見に来たんですよ。そのときに(コーンが)先発していたんです。冗談ですけど、彼の球を見て、“打てるんじゃないかと思ってこっちに来たんだ”と彼に言ったんですよ。それがあの初球のメッセージだったんですけど」
試合後には、コーンとの間のそんな友好的な“因縁”の存在も明かしてくれた。だとすれば、松井の打席でコーンがマウンドに立ったこと、初球がバックネットに達する大暴投だったこと、そして松井が本塁打後に両手を広げるポーズをとったことはすべて合点がゆく。
そんな話を聞いて、松井を久々に取り囲んだ記者たちも思わず笑顔を見せた。こういった風に、この日は選手、メディア、ファンの間でスマイルが絶えず、仲間たちとの交流と数イニングのプレーを純粋に楽しむことができる。
過去に感謝し、現在を祝福する。伝統球団とそのファンの特権。1年に一度、オールドタイマーズ・デーの間だけ、ヤンキースに関わるすべてのものが、若い頃の気持ちを少なからず取り戻すことを許されるのである。
(文中敬称略)