田中将大、“旧友対決”で今季最高の内容 岩隈2敗目も「また対戦したい」

杉浦大介

岩隈との対決で今季初勝利を手にした田中 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 先発投手にとって、本来なら疲れが出るはずの6、7回――。そのイニングに、この日の、いや今シーズンここまでで最高の投球を田中将大が見せたことは、ヤンキースにとって心強い結果と言えたのではないか。

 4月17日(現地時間)、元同僚・岩隈久志との対決となったニューヨークでのマリナーズ戦で、田中は7回を投げて6安打3失点(自責点2)。無四球の好投で4−3の勝利の原動力となり、2013年6月の黒田博樹vs.ダルビッシュ有以来となる日本人対決を制した。

ジラルディ監督も最大限の称賛

 田中にとって16年の初勝利は、チームの連敗を「4」でストップしたという意味でも大きな1勝となった。

「(初回は)完全に嫌な流れだったが、最小失点で乗り切れたのが良かった。肩を落としてしまいがちだが、良い気を出していけばアンラッキーもなくなるんじゃないかと。1点取られた後は切り替えて投げた」

 本人がそう語った通り、初回に不運な3連打などで1失点。4回にもエラーの後にタイムリーを浴び、5回には青木宣親にあわやランニング本塁打となる三塁打を打たれて失点するなど、完璧な投球ではなかった。もっとも、序盤の安打はアンラッキーなものが多く、内容は数字が示す以上に良かったようにも見えた。

「(田中は)今季最高の出来で、完封しても良かったくらいだ」

 試合後のジョー・ジラルディ監督の最大限の称賛も、決して大げさには感じられなかった。

 そして、冒頭で触れたとおり、5回1死一塁からロビンソン・カノを併殺に斬って取って以降、6、7回は3三振を含むパーフェクトピッチング。左打者のインコースに投げ込む2シームには特に威力があった。7回1死で迎えたレオニス・マーティンに対しては、速球が94マイル(約151キロ)を掲示した。

「制球という面では前回より良かった。(違いは)球のキレじゃないかと思う。スプリングトレーニングから長いイニングを投げてこれず、6回すら投げられていなかったので、7回を投げることができたのは良かった」

 悪天候の中で苦心した開幕戦、制球が乱れた12日のブルージェイズ戦と比べ、無四球だった3戦目は中身が向上したことは明らか。まだ支配的とまでは言えないものの、ヤンキース先発陣の中で今季初めて7回以上を投げ切ったうえで、見事に連敗ストッパーになった。この日の田中が、待望された“ヤンキースのエースらしさ”の片鱗を示すことができたのは事実である。

岩隈はリズムに乗れないピッチング

 一方、同じく今季3度目の先発マウンドに立った岩隈は、立ち上がりからボールが高く、痛打されるシーンが目立った。

 初回に先制点をもらいながら、2回には不振を囲っていたヤンキースのアレックス・ロドリゲスに逆転弾を許してしまう。3回にはブレット・ガードナーに適時二塁打、5回には1死一、三塁から暴投で失点。とにかく毎回のように得点圏に走者を出し、リズムに乗れない苦しいピッチングが続いた。

「序盤、ボールが高くて、身体もちょっと開き気味だった。低めに投げるというのが、なかなかコントロールきかなかった」

 不調を認めた岩隈本人の言葉通り、田中とは裏腹に、中盤まで4失点で済んだのはラッキーという印象すらあった。

 結局、この日の岩隈は7回を投げて8安打4失点で今季2敗目(0勝、防御率4.50)。試合後の表情は穏やかではあったが、古巣と再契約して臨んだシーズンで、開幕から力が出せていないフラストレーションは容易に想像できる。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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