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一致団結できる強さが宿りつつある鹿島
浦和戦で勝たなければいけなかった理由

1stステージの行方を占う浦和との大一番に勝利

1stステージ第15節の浦和戦、鹿島には勝たなければいけない理由があった
1stステージ第15節の浦和戦、鹿島には勝たなければいけない理由があった【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 3−2で逆転勝ちし、まるで優勝したかのような大騒ぎだった1stステージ第13節の名古屋グランパス戦とは対照的だった。試合終了のホイッスルを聞いたあと、ピッチの選手もベンチの監督やコーチも、互いに抱き合い、手を合わせ、グッと拳を握ることはあったものの、静かに勝利をかみしめていているように見えた。


 6月11日に行われた1stステージ第15節の大一番、相手に押し込まれながら要所を抑えて2−0で勝ち切り、「勝ち点3以上の意味がある」(石井正忠監督)という浦和レッズとの直接対決を制したにもかかわらず、鹿島アントラーズの選手やコーチングスタッフたちは喜びを爆発させることはなかった。


 それでも、試合の重みは選手のプレーの端々から感じられた。若い選手たちの気持ちの入った球際の激しさはもちろんのこと、百戦錬磨の小笠原満男でさえ、パスのコントロールが乱れ、シュートチャンスには力が入り過ぎてしまう。この試合にかける意気込みが並々ならぬものであることは、90分間の試合中、一度も疑う余地はなかった。


 みずからPKを奪い、相手の挑発にも動じることなく落ち着いて勝負を決定付ける2点目を決めた鈴木優磨は「言い方は悪いですけれど、どんな手を使っても勝ちたい思っていた」と振り返る。勝たなければ1stステージの優勝はほぼ絶望的となるだけに、鹿島としては、何としてでも勝たなければいけなかった。勝たなければいけない理由があった。

勝利への執着心を全員で共有できず……

ナビスコカップでは、第5節の湘南戦に敗れたことで、2試合を残しながら決勝トーナメント進出の道は断たれた
ナビスコカップでは、第5節の湘南戦に敗れたことで、2試合を残しながら決勝トーナメント進出の道は断たれた【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 その最大の理由は、やはりヤマザキナビスコカップでのグループステージ敗退となるだろう。今季のナビスコカップは1勝1分け4敗という前代未聞の成績で終えた。さまざまなフォーマットで催されてきた大会だけに、過去の成績と比較することは難しいが、鹿島にとっては優勝6回を誇る相性の良いタイトルである。だが、今季は予選リーグ6位に終わった。


 第5節の湘南ベルマーレ戦でアディショナルタイムに決勝点を奪われて敗れたことで、2試合を残しながら決勝トーナメント進出の道は断たれ、試合後の県立カシマサッカースタジアムは形容しがたい不穏な空気に包まれた。「消化試合なんてやったことがない」というクラブ幹部の嘆きも虚しく響いた。


 早々に1つのタイトルを失ってしまったことが、選手たちのリーグタイトルにかける思いを強くさせた。しかしながら、このことを、1つがダメになったから次の可能性に気持ちを切り替えただけと理解すると、鹿島というクラブが発する空気感とは異質なものになってしまう。


 タイトルに差はなく、優劣もない。どれかに優先して力を注ぐということではなく、極端に言えばすべての試合に全力を注ぐ。キャプテンの小笠原は口癖のように「どの試合も同じ。勝つだけです」と言うが、それは冗談でもなんでもなく、クラブに通底する理念のひとつ。すべての試合を勝とうとすることで、見えてくるものが変わり、日々の取り組み方も変わってくる。


 ただし、その“異常”とも呼べる勝利への執着心は、通常では考えにくいものだ。アウェーに行けば毎年のように聞かれる質問がある。「鹿島としては、ナビスコカップにどれくらい重点を置いてるんですか?」というものだ。J1には18クラブがあり、それぞれに置かれた環境は違う。J1優勝を目指すクラブもあれば、中長期計画のなかにいるクラブもあるだろう。もしかしたら死に物狂いで残留を目標に設定したクラブもあるかもしれない。そのなかで、本気ですべてのタイトルを目指すことは、限られたクラブにしか不可能であり、そうした問いがあることはなんら不思議はない。


 一般の生活に置き替えてみれば、むしろそれが普通のことであるのが分かる。優先順位を決めて取り組んでいくことは、仕事を進めていくうえでの初歩の初歩と言えるだろう。当然、鹿島でもその理念を全員で共有できているわけではない。それを露呈したのがナビスコカップだった。

田中滋

1975年5月14日、東京生まれ。上智大学文学部哲学科を卒業。現在、『J'sGOAL』、『EL GOLAZO』で鹿島アントラーズ担当記者として取材活動を行う。著書に『世界一に迫った日』など。

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