まだ底を出してないマカヒキ 「競馬巴投げ!第120回」1万円馬券勝負
「これって……、単勝ですよね」
階段駆け上がって二階の発売所へ。券売機の間から首を差し込み、オバチャンに口頭窓口の場所を尋ねる(“複勝コロガシ”というのは端数が出るのでずっと口頭窓口で買っていた)。しかし口頭窓口はすでに閉まっているとのこと。「仕方ない。シート塗るか」と書き出したが「え? どうやって63万100円塗ったらええんや?」。その間も窓口閉鎖のアナウンスはひっきりなしに続くし、前のオッチャンは“単・複専用”と書いてある機械に一生懸命“馬連”のシート突っ込もうとして時間は食うし、もう完全パニック状態だった。悲劇はすでに起こっていたのだ。
スポニチ・カメラマンの前に「大変だったけど、やっと買えましたよ。はい、イシノサンデー63万100円」とニコニコしながら馬券広げたとき、カメラマンは小首を傾げた。
血の気が引くということは本当にある。夢の100万突入の“複勝コロガシ”で、ぼくは単勝馬券を買っていたのだ。
しかしこれだけ大々的に新聞に書いている以上、複勝を買わない訳にはいかない。翌日、家中のカネを掻き集めて東上し、府中の口頭窓口でイシノサンデー複勝63万100円買い足した。イシノ流しの馬連と合わせ、この貧乏競馬人のポケットに生涯二度とない、実に130万の馬券がモゾモゾし、そして紙屑と消えた。
元手千円の損で済むはずが、千円プラス63万100円の損となり、「最後にズッコケルぞ」の一部の予言は見事に的中。いくつかの偶然が重なり(単なるドジとも言えるが)、帰りの新幹線は乗峯・人生最大の長い長い“オケラ街道”となってしまった。単・複の買い間違い(合計126万のクズ馬券発生)のチョンボまでついて、大変な騒ぎとなった。この貴重な経験を踏まえて「複コロ初心者」に心暖まるいくつかのアドバイスをしたい。