横浜開催でチケット完売、整氷は無事完走も…カーリング日本選手権で残った課題は?
アイスの質に懸念もトラブルなし
チーム大阪のスキップ・榛葉彩日が投じた赤いストーンは、大きな拍手に後押しされるようにインターンで回転しながらゆっくり、しかし力強く進み、ガードストーンをかわしてハウス中央に止まった。ロコ・ソラーレから2点を奪った。チーム大阪の選手には失礼な表現になってしまうかもしれないが、観客の多くはロコ・ソラーレのファンだった。勝敗にも優勝の行方にも五輪の出場権にもさほど影響のないカムアラウンドでありラストロックだった。
それでも横浜BUNTAIは割れんばかりの歓声と喝采と拍手に包まれた。ロコ・ソラーレの面々も相手の好ショットを称えるために、ブラシをあるいは片手を上げて意思を示した。得点したチーム大阪のリード笠原由衣が続くエンドの1投目を準備するまで拍手は鳴り止まなかった。
優勝を決めたフォルティウスの吉村紗也香のラストロックはもちろん、男女や選手の持つキャリアやレベル差など一切関係なく、このようなシーンが多く見られた。ある関係者が「この光景を見られただけで、横浜でやって良かったよ」とつぶやいた。
日本カーリング選手権大会 横浜2025は男子がSC軽井沢クラブ、女子はフォルティウスの優勝で終了した。
初の首都圏、しかもアリーナ開催ということで最大の懸念はアイスの質だったが、最終日まで大きなトラブルはなく8日間62試合を完走した。
藤巻正チーフアイスメーカー(日本カーリング協会アイスメイク研究会)をはじめ、飯田俊哉(みどりスポーツクラブわっかない)、山崎英威(札幌市スポーツ協会)、松村勇人(SC軽井沢クラブ)ら各地から横浜に集結したサブチーフアイスメーカー、そしてJCA(日本カーリング協会)アスリート委員会の声を拾う形でスコットランドから来日してくれたマーク・カラン氏、すべてのアイスマンがまずは最大の功労者だ。
もちろんシートごとの曲がりや戻りの差異、霜の発露、アイスメイク期間の短縮、冬季以外の開催の是非などなどが議論、調整すべき点ではあるが、それはむしろ課題というより改善点だ。アリーナアイスでの興行と長期開催が可能、と証明できただけでも日本のカーリングにとっては大きな一歩だった。
運営面でも横浜市と横浜市スポーツ協会という興行のノウハウを持った組織との共催は大きかった。連日、無事に日程を消化できたのも連日100名前後、のべ1000名近いボランティアの協力のおかげだろう。