最速149キロ!準硬式にプロ注目左腕あり=準硬式出身の元プロからのエールも
それが「硬式球より5キロは遅くなる」と言われる準硬式球で最速149キロを投じる帝京大準硬式野球部・鶴田圭祐だ。既に複数球団が調査リストに挙げている彼の現状や準硬式出身選手の先輩にあたる元プロ野球選手のインタビューとともに、その可能性を探る。
【動画】帝京大・鶴田のピッチング
普段はアメフト場で練習
左が硬式球、右が準硬式球。準硬式球は硬式球とほぼ同じ中身だが、外側の表面が軟式球と同じ天然ゴムでできている 【スポーツナビ】
一部の強豪校では、スポーツ推薦入試を利用し甲子園経験者が複数在籍する大学もあるが、帝京大にその制度はない。鶴田が準硬式球を握ったきっかけは、藤井学園寒川高(香川)から指定校推薦で帝京大に進学したことだった。
高校時代に制球を乱して、外野手に転向していた鶴田だが、準硬式野球部入部の際に同じ高校の先輩から「左投手が少ないからやってもらえないか」と頼まれ、投手に再転向。「大学に入ってから野球が楽しくなりました」と選手主導で行う準硬式の練習が肌に合った。普段の練習は大学のアメリカンフットボール場で週5日、朝の8時前から10時という環境ながら、講義の合間に学内のトレーニングジムに通い、今では180センチ84キロとたくましい体つきとなった。
それに比例するように、球速は149キロを計測するまでとなった。また昨春には、同期の左腕・金子大樹との二枚看板で東都大学準硬式1部リーグへ25年ぶりに昇格。秋から甲子園経験者を複数擁する強豪・中央大や昨夏日本一に輝いた日本大といった準硬式の名門校と対戦するようになり、その存在がかすかに日の目を見るようになっていった。
高い目標ゆえの苦悩
恵まれているとは言えない環境の中でも、己を鍛えて140キロ台後半のストレートを投げるまで成長した鶴田 【写真=高木遊】
大学準硬式界最高峰の大会となる全日本大学準硬式野球選手権の関東予選では3回戦でシード校の関東学院大戦に先発。だが、初回から3イニング連続で四球を出すと、4回には2安打と暴投が絡み失点し、7回にも四球と暴投が絡み追加点を献上した。なんとか9回を6奪三振、7安打、5四球、2失点にまとめたものの、チームは完封負けを喫した。
試合後に鶴田は「指にボールがかからず悩んでいて、調子が悪いなりの投球を目指したのですが…」と目を腫らしながら話した。一方でそんな状態ながら、最速148キロを計測するなど、まだ醒めきっていない才能の片りんをのぞかせた。
この日の悔し涙を糧に、4月3日から開幕した東都大学準硬式春季リーグで、どのような投球を見せるのか注目したい。
主な準硬式出身のプロ選手
準硬式出身の異色選手ながら、西武、広島で中継ぎとして活躍した青木。プロ11年間で210試合に登板し、9勝を挙げた 【写真は共同】
・呉俊宏(投手・法政大準硬式野球部→87年ドラフト外で大洋に入団。91年途中に西武にトレード。プロ通算7年間で10試合0勝0敗0S・防御率6.20)
・山田和幸(内野手・早稲田大学準硬式野球部→94年ドラフト6位で西武に入団。プロ通算2年間で1軍出場なし)
・青木勇人(投手・同志社大学準硬式野球部→99年ドラフト6位で西武に入団。06年に広島にトレード。プロ通算11年間で210試合9勝6敗1S・防御率4.16)
・山本歩(投手・関西学院大準硬式野球→05年大社ドラフト5巡目で西武に入団。プロ通算4年間で5試合0勝0敗0S・防御率2.84)
・川口盛外(投手・早稲田大学準硬式野球部→王子製紙→09年ドラフト6位で広島に入団。プロ2年間で1軍出場なし)、
・神田直輝(投手・群馬大準硬式野球部→09年育成ドラフト5位で巨人に入団。プロ2年間で1軍出場なし)
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