下位に沈むフランクフルト、深まる苦悩
地元エディターは長谷部の働きを評価

期待とはまったく違うシーズン

アルミン・フェー監督が復帰したフランクフルト。ここまでのところ、期待とはまったく違うシーズンになっている
アルミン・フェー監督が復帰したフランクフルト。ここまでのところ、期待とはまったく違うシーズンになっている【Getty Images】

 現在のフランクフルトは、小さなピッチを使って試合への準備のトレーニングを行うことがしばしばある。コメルツバンク・アレーナのメインスタンドの背後にある、小さなコートを使うのだ。理由はシンプルなものである。アルミン・フェー監督のもとでの練習時間が長くなると、ライトのスイッチをオンにしなければならない。そのライトが、大きな練習グラウンドには設置されていないのだ。


 期待とは、まったく違うシーズンになった。


 監督としては若い部類に入るフェーは、十分に成功を手にしてきた男だ。その指揮官が、フランクフルトへ戻ってきた。54歳のフェーは2011年からの3シーズンで、すでに驚きを提供している。1部リーグ昇格から1年で、クラブをヨーロッパの舞台へと導いたのだ。14年には先行きが見えないとの理由で辞任したが、これもまた大きなサプライズだった。だが今年の6月、フェーは戻ってきた。ただし今回も、先行きは不透明なものになっている。


 欧州中央銀行本店も設置されている国際的な銀行都市といったイメージのあるフランクフルトで、クラブは自分たちをボルシア・ドルトムントやシャルケ04に並ぶ存在だと考えている。少なくとも、1959年にはドイツ王者となり、UEFA(欧州サッカー連盟)カップも制したことがあるし、DFBポカール(ドイツカップ)でも4度の優勝経験がある。偉大な伝統を持ち、ファンにも支えられるドイツのクラブと言える。


 だが90年代半ばに、一時代が終えんを迎えた。以降、クラブはタイトルそのものよりも、スポーツ面の地道な成長や財政面の向上に力を注ぐようになってきた。例えば、スタジアムの問題がその一つだ。高額のレンタル費用が、クラブにとってネックとなっていた。

腹立たしいダービーでの2敗

フランクフルト(黒)はマインツとの“ライン・マインダービー”にも敗北、昇格組のダルムシュタットにも黒星を喫した
フランクフルト(黒)はマインツとの“ライン・マインダービー”にも敗北、昇格組のダルムシュタットにも黒星を喫した【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 ウィンターブレークを前にして、フランクフルトのスター選手たちの足は凍えているかのようだった。ファンには特に腹立たしい2敗がある。11月28日のマインツ相手の黒星は“ライン・マインダービー”での敗戦(1−2)であり、12月6日にホームで0−1と白星を献上したブンデスリーガ第15節の相手、ダルムシュタットは2部から昇格してきたばかりのチームである。しかも、33年ぶりの“ヘッセンダービー”での黒星だった。


 12月13日のアウェーでのドルトムント戦(1−4)での4失点も、前述のダービー2連敗があれば、さもありなん、といったところだ。この2敗に、フェー監督がブチ切れた。指揮官の目には、この試合での選手たちのパフォーマンスが、恥辱的なものに映ったのだ。アレックス・マイアーやマルコ・ルスといった中心選手に対して、指揮官は雷を落とした。長谷部誠は非難の対象から外されていたから、日本のファンは安心していい。とはいえ、フランクフルトが順位表の下位に漂うのはどうしてなのだろうか。


「フェーは現在、またチームに変化を加えていて、守備の安定性を追い求めているんだ」と話すのは、フランクフルトの専門紙である『DRF1』エディターのラファエル・コラディーノである。何よりもまず、指揮官にとって問題となっているのはけが人の続出だ。


「ティモシー・チャンドラーは筋断裂を負った後、調子を取り戻すことができていない。バンバ・アンデルソンは、まったく試合に出ていない」


 長谷部が守備的なポジションで起用されているのも、フェーが守備に安定性をもたらすことに躍起になっているためにほからならない。ただし、残念ながらその試みはうまくいっていない。経験豊富な日本代表キャプテンは、中盤中央の守備的な役割を与えてこそ、力強く輝く。だがここ最近、長谷部は右サイドバック(SB)のポジションを与えられている。

夏の移籍市場での失敗

 地元で取材を続けるマルビン・メンデルは、選手層の薄さだけが問題なのではないと指摘する。フランクフルトの問題は、もっと根源的なところにあるという。


「最近の敗戦を受けて、アイントラハトはひどい状態のようだと言わなければならないね。フランクフルトは夏の移籍市場で、はっきり分かっていた守備の穴を埋めることができなかった。でも、序盤にそこそこの結果が出たことで、現実を見誤ってしまったんだ」


 地元紙『フランクフルター・ルントシャウ』のシュテファン・クリーガー記者も、同様の見方をする。「メンバー構成がちぐはぐだ。チーム内には、スピードのない選手があまりに多すぎる。ダイナミズムに欠けるんだ」。マイアーのような、近年代表チームの周辺をうろうろしていた選手はいる。だがそのマイアーも、けがから回復した後にも昨季の調子を取り戻せずにいる。「また神経質になっているんだと思う」とクリーガーは推察する。


 点取り屋が不在で、守備はひどいもの。そうなれば、チームが安定しないのも当然だろう。ダービーでもファイティングスピリットをまったく感じさせないまま、「やる気の感じられないひどいプレーに終始してしまえば、成功から程遠いのも当然の帰結だ」とメンデルは手厳しかった。


 そうなれば、こうした評価はある最終的な疑問にいきつく。「フェーを復帰させたのは、正しい決断だったのか否か」。メンデルは、直球を投げてきた。彼は自身のポッドキャストで、2時間にわたって議論を繰り広げた。


「もしフェーがすぐさま急上昇の曲線を描けなければ、間違いなく困難なシーズンになる」。コラディーノも、同じ意見を持っている。攻撃力はどんどん下降するばかりだし、守備面に関しては改善の兆しが見えない。この2つがそろったならば、足し算しようにも掛け算しようにも、驚くほどにひ弱な数字しか弾き出されない。

ダビド・ニーンハウス & フランソワ・デュシャト
ダビド・ニーンハウス & フランソワ・デュシャト

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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