6球団競合右腕・大石達也の現在地
プロ5年目の今季は1軍で3試合3回1/3イニングの登板に止まった。通算成績は64試合1勝6敗8セーブ3ホールド、防御率4.38 【写真:BBM】
この結果に、一番悔しい思いをしているのが、埼玉西武であろう。最後の最後に3位の座を奪われ、CS行きの切符を逃した、その相手であるロッテがファイナルステージへとコマを進めたのだから、悔しくないはずがない。
さて、その西武はというと、来季に向けては、まずは投手陣の整備が不可欠だろう。そこで今回は、チームにとっても、ファンにとっても、復活を待ち望んでいるひとりである大石達也を取り上げたい。
登板は3試合のみも収穫あり
「今季は、それほど大きなケガがなかったので、それ自体は良かったなと思っています。肩の状態自体はあまり良くはなかったけれど、1軍に上がって3試合投げることができた。1試合も投げられなかった昨季を考えると、自分にとっては大きかったと思っています」
3試合での結果は、3イニングを投げて無失点。本人いわく「真っすぐの走り自体は全然良くなかった」が、「フォークで凡打や空振りをとれたことが収穫」だった。
自らの不注意が招いた2軍行き
「主に肩回りの筋肉をつけるトレーニングだったのですが、それを移動休みの時にホテルでやっていたんです。そしたらがっつりやり過ぎてしまって、次の日に張りが出てしまった。ちゃんと調整してやれば良かったなと、あの時は本当に悔やみました」
その後はちょうどいいバランスで教えてもらったリハビリのメニューを続けたところ、夏頃からは投げても翌日にほとんど張りは出なくなったというのだから、「もし、あの時やり過ぎていなければ」と大石が後悔するのも無理はない。
投げることを深く考えた5年間
2010年のドラフト会議で6球団競合入札の末、西武に入団。(左から福井、大石、斎藤) 【写真:BBM】
少しずつフォームが変わってきたのは、大学3年の頃からだった。実はその頃から自分でも違和感を感じていた。だが、「スピードも出ているし、抑えられているから、まぁいいかと思っていたんです」。ところが、プロに入ってから、自慢のスピードが出なくなり、スピードを出そうとしてフォームを崩し、肩を痛めた。そこで、初めて大石は壁にぶつかったのだ。
フォームが固まらず苦しい日々
大石は、大学4年間のビデオを観て研究したという。そこでわかったのが、腕の振りの違いだった。
「1、2年の時は腕の振りがコンパクトにまとまっていて、打者にとってはボールが見えづらかったんです。でも、3年あたりから徐々に大きくなっていた。さらにプロに入ってから上体がそるような形になって、左腕の開きが早くなり、右腕が上がらないうちに放ろうとするから、肩に負担がかかったのだと思います」
もちろん、これまでいくつもの病院で診察してもらったが、いつも医師からは「異常なし」という答えが返ってきた。痛みや張りが消えないのに、原因がわからない。肩に負担のかからない投げ方を模索する中で、なかなかフォームも固まらず、これまでに味わったことのない苦しい日々を過ごしてきたに違いない。
不安要素だった右肩もいい状態
「森さんに、体重移動の仕方で骨盤を意識することをアドバイスしてもらったんです。一本足で立った時に、左の骨盤をぐっと上げてから左足を踏み出すんです。そして、左足が着地した時に、今度は右の骨盤を上げる。そういうイメージでやったら、体重移動がスムーズにいくよ、と言われたので、やってみたらいい感触を得ました。実際、それを取り入れてから、スピードもこれまでは出ても140キロだったのが、一気に144、145キロまでパンと上がったんです」
右肩以外の体のキレは、プロに入って今季は一番だったと感じている大石。唯一の不安要素だった右肩の調子も夏以降はいい状態を保てている。フォームもつかみつつある今、復活ののろしを上げる日は近いはずだ。2016年の大石達也に期待したい。
(文=斎藤寿子)
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