U−18日本・坂井大将に宿る責任感 キャプテンとして前回大会の雪辱を誓う

安藤隆人

またも痛感したアジアの怖さ

初戦のラオス戦では動きが硬く苦戦。選手たちはアジアで戦う難しさを痛感した 【安藤隆人】

「アジアを戦うのは本当に難しい。だからこそ、普段から意識を持って取り組まないといけない。日頃から言っていたけれど、いざ本番となったらやっぱりみんな動けていなかった。僕も含めて、全体的に止まっているプレーが多かった。足もとで受けて止まってプレーをしていたことが反省点です。小川が1点入れてくれて、あそこで気持ちが落ち着いて、そこからようやく自分たちの流れに持っていけたけれど、そこからラスト10分位のときにまたピンチになって、苦しい試合になってしまった」

 試合後、坂井は険しい表情のままこう答えた。いくら格下が相手とは言え、慣れない場所、慣れない気候、そして独特の雰囲気が平常心を奪い、チームを狂わせていくことをよく理解していた。だからこそ、そうならないように未然に経験者として周りに伝えていた。しかし、いざふたを開けてみると、警告通りの状況になり、気がつくとそこに自分自身も飲み込まれてしまっていた。

「ミャンマー(で行われた前回大会)では僕らの方が多くのチャンスを作った。でもそれをモノにできず、ズルズル行った結果、相手に一発のチャンスでやられてしまった。いくらチャンスを作っても、決めきれなかったら意味がないし、時間が経つにつれて、どんどん一発の脅威が生まれてくる。ラオス戦も正直、それが怖かった。押し込んでいるのに、点が入らない時間が長かった。崩されて点を取られる意識はなかったけれど、『セットプレーでやられたら怖いな』とずっと思っていた。それが自分自身の中にも弱気を生んでしまった」

 頭では分かっていても、そううまくいかないのがアジアの怖さであり、勝負の世界の怖さ。あらためてその怖さ、それをはね除けてチームをけん引していくことの難しさを、彼は知ることとなった。

オーストラリアとの大一番に挑む

「この試合は、いつもはやれているのにできていないことが多くて、すごくみんなイライラしていた。それぞれ自分のプレー自体がうまくいっていなくて、ボールも動かない。そういうときにこそ、僕が引っ張っていかないといけない。球際の激しさだったり、声を出すことだったり、その時間帯、状況でどういうサッカーをするべきか、どういうプレーを選択すべきか。僕が的確にコーチングをしないといけない。内山(篤)監督の言おうとしていることも、僕には分かるので、僕がもっと的確なコーチングを周りにするべきだった。そこは反省しないといけない。でも、それを初戦であらためて気づくことができて良かったと思っています」

 ラオスに持ってきた責任感は、この経験でさらに大きくなった。チームは第二戦でフィリピンに6−0で勝利し、6日に行われる最後のオーストラリア戦に臨むこととなった。オーストラリアは日本と同じ2勝を挙げ、得失点差8、総得点も8とまったくの同率で首位となっている。もしこの試合に負けるようなことがあれば、各グループ2位のチームの中で、上位5チーム(編注:本大会の開催国であるバーレーンがグループ1位か、2位の上位5チーム以内に入ったら6チーム)以内に入らなければ、そこで敗退が決まってしまう。絶対に負けてはいけない大一番を、難敵と迎えることとなった。

「ゲームの流れをしっかりと見て、的確なプレーと声でチームを引っ張っていきたい。一次予選なんかで終われない。世界に行くために、絶対に勝ちたい」

 チームの真価が問われるオーストラリア戦。チームの中央に君臨する頼もしきキャプテンが、その責任感をプレーに昇華させたとき。坂井大将はさらに大きな財産を手にするだろう。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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