球数制限は必要、でも練習量も必要!? 「侍」コーチが高校野球に提言

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小学生まで浸透している勝利至上主義

侍ジャパンU−12代表で指導にあたる仁志氏(写真右)は小学生にも“勝利至上主義”が浸透していると指摘 【Getty Images】

青島:仁志さんはどうでしょう? 最近では甲子園大会でも1日休養日が設けられたり、指導者によっては定期的に休みを与えているケースもありますが。

仁志:確かに休みはあげた方がいいですね。自分たちも大いに休みたかったですし、そんなに毎日毎日練習して、何が身についたかと言えば、1ミリも身についてないです。たくさんノックを打ったからうまくなるわけではなく、計画を立てながらやらないといけません。ただ、数はこなさないとうまくならないのは間違いありません。

 どれくらいの練習を連続して続ければよいのか、というのはわれわれプロ側がどんどん開発して提供しないとアマチュアの人たちはたぶん分からないでしょう。これはプロ側の責任でもあります。

青島:なかなか数字でポン、と出せるものではありませんが、あるレベルの練習量をやって体にその動きを記憶させないとレベルが上がらない。それはどんなスポーツであれ間違いないでしょう。

仁志:あと気になるのは小学生でも勝利至上主義的な野球をするんです。まず積極性がないんです。四球を狙って見ていこう、見ていって、最後は追い込まれて当ててアウト、というのがあまりにも多い。プロ野球でそういうことが良いとされるから、子どもにもそうさせているのでしょう。

 ただ、まずは実力を発揮しないと話にならないですよね。投手であればまずは力いっぱい投げて、その上でコントロールを考える。打者は振ることを考えて、その上でボールかストライクを見極めるという順です。高校野球はこれが逆になっているんです。

青島:小学生でバントを失敗してひどく怒られている子を見たんですが、何を身につけるか考えた時に、今は将来良い選手になるための道の途中にいる、ということは忘れてはいけませんね。

侍ジャパンを中心に球界がひとつに

対談を行った3人。(左から)仁志氏、鹿取氏、青島氏 【スポーツナビ】

青島:ここまでいろいろとお話をうかがってきましたが、最後におふたりから高校野球への提言、要望といったものはありますか?

鹿取:基本は現状でいいと思っています。1県1校の代表で越境入学があったりするのも構わないと思います。明らかに首都圏に人数が多いわけなので、そのあたりの選手が受け入れ可能な県で活躍してもらいたい。

青島:そこは私も同感ですね。地方創生や、地方を元気にするためにいろいろな人たちに来てください、と言っているのに高校生が行くのはルール違反っていうのはおかしな話ですからね。

仁志:僕は野球界全体について思います。小学校、中学校、高校といろいろな連盟が一つにならないといけないとは思っています。侍ジャパンが非常に良い企画だと思うのは、いろいろな世代が同じ方向を目指していることで、プロを交えることで何かがうまくいくのであれば、お手伝いできることがたくさんあると思っています。

 あとは女子野球の環境を作りたいです。特に高校野球では男子は甲子園でできるのに、女子はできない。サッカーなどと比べて考えたら全くおかしな話ですよね。なので、女子の高校野球が甲子園でできることを望んでいます。

青島健太氏の対談後記

 元プロ野球選手3人によって進められる話が、プロ野球選手を養成するためにはどうしたらよいのか……ということだけに集約されることを心配していました。しかし、鹿取さんも仁志さんも、何よりも教育重視、学校生活と勉強ありきの立場で野球少年たちの指導にあたられていることを知り、安心するとともに、そこに高校野球の原点があることをあらためて確認することができました。

 高校野球の意義と醍醐味(だいごみ)は、選手それぞれが「ENJOY」の意味を考えることにあるのだと思います。けがをしては楽しめない。練習をしてもうまくなれなかったらつまらない。何をやれば勝てるのか。どうやってうまくなるか。積み重ねられた進取の精神。高校野球100年の歩みは、若者の情熱の歴史。自分にとって何が「ENJOY」なのか? それを突き詰めることが、高校野球の使命であり、選手としての楽しみなのだと思います。

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