プロ輩出率No.1徳島が抱える野球危機 県外に出る有望選手、低下する体力
プロ野球選手輩出率が最も高い徳島
今夏の大会で初戦敗退した徳島・鳴門高。プロ野球輩出率は最も高いというデータがあるが、県を代表する監督たちから聞かれたのは危機感だった 【写真は共同】
だが、果たして四国は本当に衰退傾向にあるのだろうか。
スポーツナビがそんな疑問を抱いたのは、この夏に行った「高校野球の都道府県別事情」(下記リンクのコラム)で興味深いデータが出たからだ。全国のプロ野球選手輩出率を調査したところ、徳島県が最も高かったのである。
徳島は全国で唯一、夏の甲子園出場をすべて公立高校が占めてきた。さらに言えば、県内31の硬式野球部のうち、私立は武田久(北海道日本ハム)を輩出した生光学園高しか存在しない。公立王国がなぜ、高い比率でプロ選手を育てあげているのだろうか。
徳島の名将が口する危機感
そう話したのは、2015年から早稲田大学野球部を率いる高橋広監督だ。大学球界で指揮を執る前は、鳴門工業高を率いて02年のセンバツで準優勝を果たしている。捕手の育成に長け、里崎智也氏(元千葉ロッテ)、渡辺亮(阪神)ら計6人をプロに送り込んだ。
「全国1位というのはびっくりですね。ただ、率から言えばそうかもしれないけれど、他県より人口が少ないですから。プロに入っている人数で言えば、多くないですよね」
こう語ったのが、池田高で指導する岡田康志監督だ。現役時代は1979年夏の甲子園で準優勝を果たし、監督としては91年から2年続けて夏の全国大会出場に導いた。14年には27年ぶりのセンバツ出場を果たしている。
両監督ともに、むしろ口にしたのは危機感だった。現在、徳島では深刻な地盤沈下が起きている。最たるものが、人口減少だ。
徳島県のホームページによると、50年の87万9000人をピークに、13年には推計77万人まで低下。生産年齢人口(15〜64歳)は85年の55万4000人をピークに、10年には47万2000人まで減り、40年には28万9000人になる見込みだ。年少人口(14歳以下)は10年が9万7000人で、40年には5万3000人と半分近くになる見通しである。
人口が減れば、必然的に野球をする高校生も少なくなる。池田高で指揮する岡田監督は、身をもってそう感じている。
「子どもの絶対数が減っているので、池田でも10年後、20年後、野球部の存続がどうなるか。全国で勝つというレベルではなく、野球部の運営危機を回避しなければいけません。三好市と池田地区の高校は2年後にひとつに統合され、ふたつの分校になります。それが10年後にはひとつになっているかもしれない。私たちのように、田舎では悩んでいる学校が多いと思います」