辰吉寿以輝が見せた“どつきあい”の魅力=父・丈一郎は苦笑い「必死過ぎるんや」
荒削りも非凡なパワーを披露
2回KOでプロデビューから2戦連続KO勝利を飾った辰吉寿以輝 【写真は共同】
試合を終わらせた強烈な左フック
初回は右ストレートをまともにもらうシーンもあったが、2回に強烈な左フックで試合を終わらせた 【写真は共同】
この日も高槻市役所に勤務する公務員ボクサ−、岡村の左ジャブからの先制攻撃を真正面から受け止め、初回の中盤には右ストレートをまともに浴びる場面も。左右によく動く相手をつかまえきれない懸念もあったが、2回には左ジャブ一発で岡村をロープへ吹き飛ばすと、右ストレートから左フックをフォロー。たたみかけるときの圧力とパワーを見せたかと思うと、最後はクリンチされたところを強引にふりほどき、わずかな距離ができたところへ強烈な左フックを決めて試合を終わらせた。
父と同じバンタムに「こだわりない」
父・丈一郎は「必死過ぎるんや」と苦笑いも、「よく練習していることはわかった」と戦いぶりをたたえた 【写真は共同】
控え室で報道陣に囲まれた寿以輝は言葉少なに試合を振り返った。
4月のデビュー戦ではスーパーバンタム級のウエートでリングに上がったが、この日は1階級下げ、父が3度世界王座を獲得したバンタム級リミットの体に仕上げた。本人は「バンタムに落としても、減量がきつくて足が動かないとかはなかった。別にバンタムにこだわるつもりはないし、ベストなウエートでやりたい」と語ったが、10キロ以上の減量でより体を絞ったせいか、背中の筋肉の隆起、とりわけ、左フックをたたき込むときの躍動感が父の全盛期に似ていたのも、『辰吉ファッション』に身を包んで会場にかけつけた熱心なファンのノスタルジックな感情をかきたてた。
その父は「緊張しとったなあ。ガチガチやった。アマ経験がないから必死過ぎるんや」と苦笑い。技術面の成長についても「まだ2戦しかしてないからわからん」と突き放しながら、それでも「内容の充実した練習があったから(KO勝ちにつながった)。あいつの練習は見たことないけど、よく練習してきたことがわかった。試合では練習してきたことしか出ないから」とたたえた。
ディフェンスが課題も募る期待感
持ち前のパワーにリズムが加わり、課題のディフェンスを磨けば……寿以輝の今後の成長に期待せずにはいられない 【写真は共同】
殴られたら、殴り返す――洗練された技術の背後に隠れがちな泥臭くて無骨な、しかしこの競技の根源的な魅力をいつか、辰吉寿以輝というボクサーがこれまでにない形で披露してくれるかもしれない。
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