松坂の鍛錬が導いた横浜高の春夏連覇 高校野球 歴代最強校はどこだ?(3)

楊順行
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98年夏の甲子園決勝、京都成章をノーヒットノーランで下し、ガッツポーズを見せる松坂(左)と駆け寄る捕手・小山 【写真は共同】

 数々の名勝負、ドラマを生んだ夏の甲子園だが、1998年の横浜高(東神奈川)ほど1大会でここまで人々の記憶に残る戦いを演じたチームはないだろう。準々決勝のPL学園高(南大阪)戦の延長17回の死闘、準決勝の明徳義塾高(高知)戦の大逆転劇、決勝の京都成章高(京都)戦、松坂大輔(現福岡ソフトバンク)のノーヒットノーラン。史上5校目の春夏連覇、そして史上唯一の公式戦無敗、明治神宮大会、国体を含む4冠と記憶にも、記録にも残る強さを、横浜は発揮した。高校野球100年の節目を機会に、歴史を彩ってきた強豪校の強さ・魅力に迫っていく特別企画。第3回は98年の横浜を振り返る。

44戦無敗で達成した史上初の4冠

「あのチームは、パーフェクトでした。あらゆるチームプレー、チームワーク、エース・松坂を初めとして個人の能力はもちろん、モチベーションの高さも、厳しさも……」

 この夏限りでの勇退を発表した横浜・渡辺元智監督はそう言う。確かに、97年秋の新チーム結成から98年にかけての横浜は、パーフェクトだった。神奈川、関東を制し、97年秋の明治神宮大会も優勝すると、98年は史上5校目の春夏連覇。おまけに地元・神奈川開催の国体も制して、神宮大会から通じて高校4冠である。史上初の、そして今後もおそらく破られることのない偉業だった。その間、公式戦44勝無敗。

 クライマックスは、夏の準々決勝からのミラクル3連発だろう。準々決勝はPLとの延長17回の死闘を制し、準決勝は明徳につけられた6点差を8、9回だけで大逆転し、決勝は松坂が京都成章をノーヒットノーランだ。「甲子園で、3試合続けてドラマが起こるなんて……」と渡辺監督自身が語るほど、劇画でもちょっとないほどの出来過ぎだ。
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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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