若手が活躍も男子バレーの気になる温度差
チーム内への目配りは十分か?

韓国にホームで連勝

韓国にホームで連勝し、日本はワールドリーグ通算成績を4勝4敗とした
韓国にホームで連勝し、日本はワールドリーグ通算成績を4勝4敗とした【坂本清】

 6月20、21日に行われた、男子バレーのワールドリーグ2015インターコンチネンタル・ラウンド第4週大阪大会・韓国戦は、日本が2戦とも、セットカウント3−0で勝利した。前週からの対韓国4連戦を3勝1敗で終え、日本は通算成績を4勝4敗とした。


 大阪大会の2戦では、日本は強力なジャンプサーブと戦略的なジャンプフローターサーブが機能し、ほぼ先行した状態で試合が進んだ。そうなると韓国はサーブで攻められなくなり、日本は安定したレセプション(サーブレシーブ)から、出耒田敬(堺)、山内晶大(愛知学院大)のクイックを中心に楽にサイドアウトを重ねていく理想的な展開となった。


 セットを失うことなく連勝したことは何よりだが、今の実力をはかるには物足りない試合だった。韓国は、本来なら攻撃の中心となるムン・ソンミン、チョン・ガンインの2人をけがで欠いていた。しかもこの2日間は覇気も集中力もなく、21日の試合後に、ムン・ヨングァン監督が、今年の就任後初めて声を荒げて選手たちを叱責したと言うほどだ。


 何より、世界のトップ集団に近づくためには、視線はもっと上に向けていなければならない。選手は連勝に浮かれることなく、今週末にアウェーで行われる同グループ最上位(14年9月22日付の世界ランキングで12位、日本は21位)のフランスとの戦いを見据えていた。セッターの深津英臣(パナソニック)は、ここまでの4週を振り返ってこう語った。


「僕の中では、このワールドリーグはフランス、チェコとどう戦うかというイメージを一番にしていた。その意味では第1週チェコ戦、第2週フランス戦はあまり良いところがなかった。特に(2戦とも0−3で敗れた)フランス戦は反省点さえ見つからない試合になってしまった。韓国に2連勝できたことは意味のあることだけれど、もっと自信をつけるためには、格上のチームに勝つしかない。この勢いでフランスに勝負に行きます」


 残り2週、フランス大会、チェコ大会で真価が問われる。

若手の中でも際立つ石川の存在感

ここまでの収穫は若手の活躍。浅野(中央)らが個性を発揮した
ここまでの収穫は若手の活躍。浅野(中央)らが個性を発揮した【坂本清】

 とはいえ、ここまでの4週8試合で見せた若手の活躍は収穫だった。ベテランが登録メンバーから外れたアウトサイドでは、石川祐希(中央大)、栗山雅史、柳田将洋(ともにサントリー)、浅野博亮(ジェイテクト)がそれぞれ個性を発揮した。中でも存在感が際立ったのは、やはり石川だった。


 第1週の岡山大会チェコ戦では、リベロの酒井大祐(日本バレーボール協会)とともにレセプションの中心となりながら、2試合ともチーム最多得点を挙げ、フルセットになった第2戦は67.65%という驚異的なスパイク決定率を残した。深津英が、「石川に頼っているところが多い。乗ってくると全部決めてくれるので。他の選手もいいし、(トスを集めると)疲れが出ると思うので、もう少し考えないと」と話したように、既にチームの柱となっていた。


 しかし、第2週の京都大会フランス戦の初戦は攻守ともに精彩を欠いた。


「今日は『まずスパイク』になってしまったのが原因だと思う」と試合後、石川は自己分析した。石川は常々、「自分はディフェンスをメインでやっていかなきゃいけない」と話す。まるで自分に言い聞かせるように。しかし、チェコ戦で自分が一番の得点源になったことで、「自分が決めなくては」という心理が強く働き、バランスが崩れたようだ。


 それでも、「まずディフェンスから」と強く意識して臨んだ翌日の試合では立て直してみせた。今大会、石川は速いトスではなく、少し浮かせたトスで、高い打点からしっかりとブロックを見て狙いどころへ打ち抜いている。これまで日本は男子も女子も、海外の高いブロックに対しては速さで勝負するしかないという考え方だったが、速くし過ぎることで、打てるコースの幅が狭まって1枚ブロックに阻まれたり、ボールに力が乗らずに拾われるというパターンに陥りがちだった。そうではなく石川は、まずブロックを見てしっかりと打ち分けられることに重きを置いている。それは、昨年の全日本や、今年の冬場、イタリア・セリエAの強豪・モデナに約3カ月間所属していた間に再認識したことだった。

モデナで開けた過去の引き出し

存在感が際立つ石川。工夫をこらし、世界の高さに対抗する
存在感が際立つ石川。工夫をこらし、世界の高さに対抗する【坂本清】

 深津英はこう明かす。


「祐希に今年『どういうトスがほしい?』と聞いたら、『もう少し浮かして、空中でちょっと余裕ができるようにしたい』と答えました。『世界を相手にそれで決まる?』と聞いたら、『大丈夫ですよ』と言うので、じゃあそれで行こうと。あいつが一番、世界でどういうトスが決まるかを、肌で実感してきたわけですから」


 滞空力と判断力、そして技術があるからこそできることではある。


 19歳という若さにして、元々スパイクの引き出しが非常に多かった石川だが、モデナに行って、長らく使っていなかった引き出しを開けた。例えば、今大会でも見られた、微妙に打つタイミングを遅らせてブロックをかわすといった技術だ。それは中学生の時以来、開けていない引き出しだった。


 現在は身長191センチとなったが、小中学生の頃はさほど大きな選手ではなかった。中学2年までは180センチに届かなかったため、自分より高いブロックを相手にすることも多く、創意工夫を重ねた。石川の選択肢の多さは、この頃がベースになっている。高校で身長が伸び、ブロックの上から打てるようになったため、そうした引き出しは必要がなくなったのだが、再び開ける時がきた。


「中学生の時はいろんなことをやりながら点数を取っていたので、もう一回、それを思い出しました。高校からは別に必要なかったんですけれど、世界を相手にすると、自分はまた“ちっちゃい側”になるので、そういうのが必要になるから」


 子供の頃から高さがあり、工夫をこらさなくてもブロックの上からガンガン打って決められた選手は、全日本で世界の高さに出会った時、非常に苦労する。「小さかった少年時代」を経た石川は、ラッキーなのかもしれない。

米虫紀子

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

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