W杯から逆算して準備を続けるなでしこ 不安よりも期待が大きくなった2連勝
コンディションは現時点で問題なし
W杯に向けた国内でのテストマッチ2試合を、共に1−0の勝利で終えたなでしこジャパン 【写真:アフロスポーツ】
3月にポルトガルで行われた女子W杯“前哨戦”のアルガルベカップでは、デンマーク(1−2)、フランス(1−3)に敗れるなど、なでしこジャパンとしては過去最低の9位に終わった。W杯連覇に向けて黄信号がともっていたチームだが、逆転負けで内容的にも「完敗」だったフランス戦直後に佐々木監督は、シーズンが始まり国内組のコンディションが上ってくれば「フランスに食らいつけるだけの力を日本の選手たちは持っている。逆にもっとしてやられるかと思っていた」と発言していた。
ある意味、このラストマッチ2試合は佐々木監督の発言に多少の強がりが込められていたのかどうかを確認できる機会であったわけだ。ニュージーランド戦後の佐々木監督はコンディションについて次のように話した。
「(国内組は)アルガルベよりも全然上がってきている。欧州のシーズンは終っているが、(海外組は)そのままの流れの中で来ているので、双方に良いサッカーのパフォーマンス、コンディションで集まってきてくれている」
コンディションというと真っ先にイメージされるのがフィジカルコンディションだが、注目していたのはフィジカル面のコンディションが上がってきた中でどれほどゲーム勘、頭の中の判断スピードが上がっているのかという部分だった。特に、アルガルベカップでは頭の回転数という意味での「インテンシティー」に欧州組と国内組に大きな差があり、それがピッチ上でちぐはぐな連携やテンポの上がらないサッカー、中盤での信じられないミスを誘発していたのだが、この2試合のパフォーマンスや起こったミスのレベルを見る限りコンディションの問題は現時点で「ない」と言い切れるレベルだろう。その前提があった上で、ここからは具体的な収穫と課題について言及していきたい。
ミドルゾーンにおける安定感が向上
澤の復帰によってミドルゾーンにおける守備の安定感と強度が出てきた 【写真:アフロスポーツ】
2011年のドイツ女子W杯で世界チャンピオンに輝いたことでポゼッションをベースとした「パスサッカー」がなでしこサッカーの代名詞となり、周囲はなでしこのサッカーを「攻撃的」と定義付けた。しかし、実際にはボールを持つ時間が長いからこそボールを失った切り替え局面や守備において強度の高いプレーが行いやすいという部分がなでしこらしいサッカーのキーファクターで、澤の復帰によりそれをすんなりと取り戻した印象だ。加えて、佐々木監督は今回のキャンプで守備をメインテーマに設定したトレーニングを行ったという。勝ち切る(逃げ切る)ために5バックや4−1−4−1などシステムのバリエーションを増やした。さらに、「勝ち気で前線からガンガン行きたがる選手が多い」(佐々木監督)なでしこジャパンに、ミドルゾーンでしっかりとブロックを敷く忍耐強い守り方と、守備からリズムやイニシアチブをつかむサッカーを植え付けている。