粟生、三浦、内山、田中ら世界戦目白押し=5月のボクシング興行見どころ
粟生が挑む聖地での3階級制覇
世紀の一戦が行われる前日、同じラスベガスで3階級制覇に挑戦する栗生 【船橋真二郎】
WBC世界フェザー級、WBC世界スーパーフェザー級に続き粟生が狙うのはWBO世界ライト級のベルト。空位のタイトルをレイムンド・ベルトラン(メキシコ/29勝17KO7敗1分)と争う。粟生に懸かるのは3階級制覇だけではない。聖地ラスベガスで世界タイトルを奪取すれば、日本人としては史上初になる。
ベルトランは過去にこのベルトに2度アタックした経験がある。2013年9月には英・グラスゴーで地元の人気者リッキー・バーンズ(英)に挑戦し、8回に左フックでダウンを奪うなど優勢に試合を進めながら不運な引き分けに泣いた。最新のチャンスは昨年11月、バーンズから王座を奪った次期スター候補のテレンス・クロフォード(米)に挑み、大差の判定で退けられている。タイプを分ければファイター寄りになるが「頭から突っ込んでくることもないし、嫌いじゃない」と粟生が評するように一定のうまさとスピードを備える。以前はマニー・パッキャオ(フィリピン)のスパーリングパートナーを務めていたこともあり、心身のタフさは折り紙つきと言える。
粟生にとっては実に2年5カ月ぶりの世界戦。粟生自身が「長谷川(穂積)さんでも3年待ったし、ライト級という難しい階級でもあるので、待つことは覚悟の上だった」と言うように2度あるようなチャンスではない。しかも試合の翌日には、フロイド・メイウェザー(米)対パッキャオのスーパーファイトが同じラスベガスで挙行されるという絶好のシチュエーションでもある。ここ2戦は被弾も目立ち、不出来だった粟生。それだけに不安は残るが、キャリアの正念場という気構えはひしひしと伝わる。米国のリングは2年前にロサンゼルスで経験済み。「どこでどんな試合をするのも何とも思っていない。リングはリング」と頼もしい。習志野高校時代には史上初の6冠を達成。大きな期待を背負ってプロデビューしたサウスポーも31歳になった。集大成を見せるのはこのリングしかない。
王者・三浦が進化を証明できるか!?
V4を狙うWBC世界王者・三浦は元IBF世界王者ディブに“進化の証明”を見せられるか 【船橋真二郎】
挑戦者は元IBF世界フェザー級王者ビリー・ディブ(オーストラリア/39勝23KO3敗1無効試合)。基本的には好戦的な右ボクサーファイター型だが、アマキャリアも豊富でボクシングの幅は広い。浜田剛史・帝拳ジム代表も「打ち合いにくればパワーのある三浦の土俵。アウトボクシングをしてくる可能性もある」と出方はリングに上がってみないとわからないと語る。だからこそ、三浦は「相手どうこうより自分自身のスタイルに磨きをかけた」と自身のベースアップに集中してきた。
以前から「一撃で足腰を立たなくするような、担架送りにするような豪快な倒し方をしたい」と語ってきた三浦。そのためには「タイミングが一番大事。KOはしたいが、狙わずにいきたい」という言葉には成長の跡がうかがえる。起伏に富んだキャリアを歩んできたディブは二十代の前半のころ、ラスベガス、ニューヨーク、アトランティックシティなど、米国のリングを転戦した経歴も持つ。2年2カ月ぶりの王座返り咲きと2階級制覇を懸けて挑んでくる元世界王者を相手に“進化の証明”を果たすことができれば、自ずと3連続KO防衛もついてくるだろうし、三浦の評価はまたぐっと高まるに違いない。
三浦と同じリングでは村田諒太(帝拳/6勝4KO)のプロ7戦目が行われ、初の世界ランカーとなるWBO世界ミドル級14位のドウグラス・ダミアノ・アタイジ(ブラジル/13勝6KO1敗)と対戦する。現在WBC同級7位、IBF14位の村田とは世界ランカー対決。「金メダリストと戦うことは世界に名前を知られる大きなチャンス。ブラジルにも強いボクサーがいることを証明したい」と意気込む24歳に対し、ステップアップを続ける村田は力を示すことができるか。また、この日は元2階級制覇王者の八重樫東(大橋)の再起戦も組まれている。昨年12月30日にライトフライ級での3階級制覇に失敗した八重樫は、スーパーフライ級で試運転のリングに上がる。