ドイツ以外の3カ国で苦戦する日本人選手 本来の実力を発揮できない要因は何か?
突出して多いドイツへの移籍
チェルシー移籍がうわさされる武藤。しかし、プレミアリーグで日本人選手はなかなか活躍できていない 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ドイツ:30人
イタリア:10人
イングランド:11人
スペイン:12人
これはJリーグ発足後の93年以降、各国の1部リーグあるいは2部リーグ所属のクラブに在籍した経験を有する日本人選手数である。ドイツが突出しているのは想像通りだと思うが、実は今回対象とした4カ国の中ではイタリアが最も少ない。それでも日本人選手のイメージが悪くないのは、10人全員が1部リーグ経験者であることと、中田英寿と長友佑都という突出した2人の活躍に拠るところが大きいのは間違いない。ということで、今回はやや編集部の意向と逸れることを許してもらいつつ、語り尽くされている感のあるドイツ以外の3カ国でなかなか日本人選手が活躍できない理由を探っていきたい。
最大の理由はポジション
活躍できない最大の理由はポジションにある。FWでありながら、サイドハーフで起用された柳沢(左)は本来の実力を発揮できなかった 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】
イングランドは少し様相が異なり、まず川口能活と林彰洋という2人のGKが2部リーグ所属クラブへ加入したものの、満足に出場機会を得ることができなかった。また、ワールドカップ(W杯)日韓大会での活躍を認められた戸田和幸は、守備に軸足を置くMFとして今回のテーマに置いた4カ国へ初めて挑戦した選手だが、実力を高く評価されていたサンダーランドとの契約が直前で破談となった不運がキャリアに影響したことは付け加えておきたい。
基本的には攻撃的なポジションの選手ばかりが評価を受けて海を渡るものの、各国の高い壁に阻まれているのが現状だと言える。これには大きく分けて2つのジレンマがあるように思う。
1つは攻撃陣全体のクオリティーが高くない中位以下のクラブで、出場機会は得るものの結果が出ないパターンだ。今までの日本人選手の大半はこの問題に苦しめられてきた。生かし生かされるタイプの多い日本人選手には、周囲とのコンビネーションは生命線だが、その精度はシーズンを追っていっても上がっていかず、そもそもそれ自体が存在しない場合もある。それでも外国籍選手だという期待とプレッシャーの中で、得点という目に見える数字が出ないと、出場機会も限られてしまう。おそらくはこの繰り返しに多くの挑戦者が直面してきたはずだ。1人でゲームを決め切るタイプの少ない日本人選手にとって、この問題はもしかすると永遠に続く課題かもしれない。
もう1つは単純にビッグクラブで出場機会自体が限られるパターンだ。最近ではバイエルン・ミュンヘン時代の宇佐美貴史とマンチェスター・ユナイテッド時代の香川真司が思い浮かぶ。これは日本人選手の価値が上がってきたこととイコールであり、喜ばしいことではあるが、やはり彼らのような国内有数のタレントでもビッグクラブでレギュラーを張るまでには至っていないのが現実だ。