内田篤人と香川真司が得た異なる収穫 ダービー終了後に語られた2人の本音

中田徹

トップフォームを取り戻しつつあるドルトムント

「本当に手応えを感じていた」とシャルケとのダービーマッチを振り返った香川 【Getty Images】

 2月28日に行われたルールダービーは、ドルトムントがシャルケを3−0で破った。均衡が崩れたのは78分だった。ピエール・エメリク・オーバメヤンが先制ゴールを決めると、その1分後にはヘンリク・ムヒタルヤンが追加点。86分には相手GKのボールを奪ったマルコ・ロイスが駄目押しゴールを決めた。

 シュート数を比較すると31対3。ドルトムントの枠内シュートは実に23本もあった。ドルトムントが最下位を脱出してから、まだ1カ月に満たない。しかし、トップフォームを取り戻しつつある彼らは、センセーショナルと言ってもいい内容でシャルケを完膚なきまでに打ちのめした。香川真司は、この日のチームパフォーマンスをこう振り返る。

「やりながら良い時のイメージで、本当に手応えを感じていました。プレッシャー(のかけ方)だったり、ボールを取った後の攻撃の質だったり、本当にみんな連動していました。欲を言えば前半で1点2点取れていれば、もっと楽に試合を進めることができたのかなと感じます」

 先制ゴールが生まれる2分前にベンチへ退いた香川だったが、とりわけ前半は良いパフォーマンスを見せた。今の香川は、イメージとパフォーマンスが一致しているのだろう。後方からのパスをトラップし、あっという間に反転してからスルーパスを出すプレーが小気味よかった。シュートの精度こそ欠いたが、ゴール前への飛び出しは相手にとって脅威だった。ロイスのシュートがGKに防がれたこぼれ球を狙いに行った56分のような動きを、何度も繰り返して行けば“ゴール”という結果が香川につくのも時間の問題だろう。

 今のドルトムントは「(パスの)“受け手”が多く、今の自分は“出し手”としての役割が多い」と香川は分析している。そのようなチーム事情から、自身のシュートが少なくなるのは「仕方ないが、もっともっとシュートに絡んで行かないといけない。今は辛抱してやり続けたい。手応えはある」と自信が戻った様子だ。

 香川の復調をピッチの上で感じ取った内田篤人はこうコメントした。

「マンチェスター・ユナイテッドへ行く前の真司は、飛び抜けて良かった。期待もある中、大変だったと思う。今日はうざいぐらい良いポジションでボールをもらって、ターンもスルーパスも良かった」

内田「無理して(出場して)よかった」

内田はチームこそ惨敗したものの「無理して(出場して)よかった」とベストファーレンでの試合経験を喜んだ 【Getty Images】

 その内田は「半分、守備練習みたいだった」とこの日のドルトムントに脱帽。特に前半のドルトムントのすごさに衝撃を受けたのが、ハーフタイムのシャルケのロッカールームに現れた。「すごく元気が無かった。監督が『お前らどうした!?』という感じ。そんなの珍しいんだけどね。俺は0−0でオッケーだと思っていたけれど、内容がガツンとやられていたから」(内田)と静まり返っていたという。

 それでもシャルケは0−0のまま試合が進めば、ワンチャンスで勝つことができるかもと虎視眈々(たんたん)と“その時”を狙っていた。それが72分のシーン。ベネディクト・ヘーベデスのパスを受けた内田は、左サイドへ流れてフリーになりかかっていたクラース・ヤン・フンテラールめがけてミドルパスを出したが、やや流れてしまいGKにキャッチされた。これが通っていれば1点ものだっただけに、GKにボールを取られた後の内田の落胆ぶりは大きかった。

「アウトにかけすぎたかな。CL(チャンピオンズリーグ)もそうだけれど、相手のレベルが上がれば上がるほどああいう1本だけで試合の展開がガラリと変わったりする。狙ってはいたけれど、あとちょっとだった。ちょっと可能性感じたでしょ。俺も可能性感じたからね」

 さらに攻めようと74分、内田が右サイドをオーバーラップし、スルーパスを入れようとしたが、マッツ・フンメルスの堅い守備に遭いドルトムントのカウンターを受けた。そして78分から始まったドルトムントのゴールラッシュの前に、シャルケが瓦解(がかい)した。

「いつも試合があるくせして、こういうときに限って1週間試合が無い。ダービーで負けた1週間はだいぶ町全体がどんよりするからね」

 試合が終わって1時間経ったベストファーレンのインタビュールームに、ドルトムントサポーターの喜びの叫声が響き、ちょっと内田が驚いた。

「けがはあんまり良くないけれど、(この試合には)死んでも出ようと思っていた。ダービーでドルトムントとやるなんて、シャルケじゃないとできないから。ドルトムントのスタジアムでやれてよかった。ピッチに入った時の雰囲気、ブーイング、超良いもんね。無理して(出場して)よかった」

“3−0”という屈辱のスコア。内容も悪かった。シャルケのサポーターは怒っている。それでも内田にとっては、プレーして良かったと思わせるベストファーレンでのルールダービーだった。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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