称賛される内田篤人の変わらぬ仕事ぶり 苦境のシャルケで必要なクラブ精神の発揮

CL、ダービーで連敗

CLでC・ロナウド(右)と対峙した内田だったが、得点を許した 【写真:アフロ】

 内田篤人は低く構えて、ボールの後ろから目をこらす。最後まで似たような姿勢のままで、試合終了の笛を聞いた。頭を腕で覆った内田は、ダービー敗戦の香りを鼻腔に吸い込んだ。シャルケは1年で最も特別な試合に、チャンスのないまま0−2でボルシア・ドルトムントに敗れたのだ。数日前にチャンピオンズリーグ(CL)でレアル・マドリーに喫したものに続く、苦い敗北だった。

 シャルケの日本人選手は、世界最優秀選手に対して何もできなかった。前回の対戦(2013−14シーズンのCLラウンド16)ではホームで6失点していたシャルケは守備を固めざるを得ず、内田はクリスティアーノ・ロナウドのケアに時間を費やすこととなった。「一度ならず、左サイドのアオゴ以上に効果的なプレーを見せてはいた」。この試合に関する自身の意見として、『西ドイツ新聞』のアンドレアス・エルンストはそう記した。しかし試合ではレアル・マドリーが2−0で勝利しており、その得点者の一人はC・ロナウドだった。

 また同記者は内田が同点ゴールを決めていてもおかしくなかったことにも言及した。74分、ペナルティーエリア内に走り込んだ内田を経由して、交代で入っていたフェリックス・ブラッテのシュートにつなげる。これはバーをたたいてしまったが、内田はこぼれ球に反応。押し込めなかったものの、シャルケのこの試合最大のチャンスだったと言っていいだろう。

責任が少しずつ大きくなり続けている

内田が負う責任は少しずつ大きくなり続けており、攻守両面で働くことを求められている 【写真:フォトレイド/アフロ】

 確かに内田は、ブンデスリーガで通算1点しか決めていないが、彼に求められる役割がストライカーではないと、誰もが知っている。だが、このシーンにこそ、シャルケのロベルト・ディ・マッテオ監督が内田に求めていた戦術的役割が示されている。

 シャルケを取材し続け、『レビアスポーツ』誌などで健筆を振るうジャーナリストのエルマール・レデマンに話を聞くと、「現状で、内田が負う責任は少しずつ大きくなり続けている」と話した。内田は今、単なるウイングバックでも、ウインガーでもサイドバックでもなく、攻守にわたり働くことを求められている。

 ダービーでも、その仕事ぶりは変わらなかった。3バックの脇に入ってしっかりスペースを消し、一気のスプリントで黄色い壁の背後を狙った。最終ラインからのフィードを、相手陣内深くで受けた場面もある。試合終盤までは、クロスよりもロングスローでボックス内にボールを送る回数の方が多いほどだった。ドルトムントが輝き続けたダービーだったが、それでも内田は自分の仕事を放棄するようなことはなかった。サッカー専門サイトの『GOAL』はダービーでの内田の働きを、「シャルケの中でも数少ない、試合を組み立てようとする選手だった」と分析した。実際には、サイドでマルコ・ロイスのスピードに対応すべく、守備の仕事を多く割り当てられた。ロイスは自分の働き場を、シャルケの3バックの隙間に求めることが多かった。

「ウッシー(内田)は常に、守備面のタスクに集中することを求められた」と話したのはレデマンだ。「内田の性格からすると、こうだ。自分の力だけで輝こうとすることはない。常に一番先に来るのは、チームとして成功をつかむことなんだ」

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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