立川理道が語るラグビーW杯への決意 エディージャパンの司令塔が復活

斉藤健仁

「ダン・カーターよりうまいかも」

韓国戦で復調の兆しを見せた日本代表の司令塔・立川理道 【斉藤健仁】

 4月18日、9月にイングランドで開幕するワールドカップを控え、韓国・仁川で「エディー・ジャパン」となって4年を迎えるラグビー日本代表の初戦が行われた。格下の韓国代表との対戦だったものの、相手の前に出るディフェンスに手を焼き、一時は3対17とリードされたが、最終的には56対30で勝利を収めた。

 日本代表の10番を背負っていたのは「ハル」ことSO立川理道(たてかわ はるみち/クボタスピアーズ)だった。「パスとキャッチに優れていて、ダン・カーター(ニュージーランド代表)よりもうまいかもしれない」と日本代表を率いるエディー・ジョーンズHCの信頼が厚い司令塔だ。韓国代表戦では、相手にパスをインターセプトされてトライを献上したが、ロングパスで初キャップとなったWTB松井千士(同志社大3年)のトライをお膳立てし、浅めに立って自らランで仕掛けるなど復調の兆しを見せた。

 ただ、ジョーンズHCに「まだ防御を見て判断していない。ハルはクボタのジャージーを着ているよう」と指摘されたように、本人ももちろん満足していない。「韓国代表は、かなり前に出るディフェンスで来ました。飛ばしパスは一度カットされてしまいましたが、ハンズ(短いクイックパス)やムーブ(サインプレー)でもっと良い形で外に回した方が良かったかな、と。相手がどんなディフェンスでもシェイプの深さやアライメント(アタックラインの形)を変えながらどこにボールを運ぶか。今日の試合はスキルにミスがありました。次は同じようなことはしないようにしたい」(立川)

スーパーラグビー挑戦も公式戦出場ならず

昨季はスーパーラグビーに挑戦も、公式戦に出場できず苦しんだ 【斉藤健仁】

 ラグビーキャリアを順調に積んできたハルだったが、実は、昨シーズンは苦しみ、もがいていた。

 立川はラグビー界では知られた四兄弟の末弟で、兄たちの影響で4歳から楕円球の道へ。天理高では花園に出場し、天理大では主将として2011年度の大学選手準優勝に大きく貢献した。日本人SOとしては身長180センチ、体重95キロと身体も強く、パス、ラン、キックと三拍子そろった逸材。2012年春、大学卒業後は兄・直道と同じクボタに入社すると同時に、ジョーンズHCに日本代表にも選出された。

「1年目は自分のことだけに精一杯という感じでしたが、2年目は少し余裕が出てきて成長できましたね」と本人も言うように、2年目(2013年)の6月、日本代表がウェールズ代表に初めて勝利した試合でも10番を背負い、見事に試合をコントロールした。さらに日本のシーズン終了後の2014年1月末から、スーパーラグビーのブランビーズ(オーストラリア)へ留学したものの、残念ながら公式戦に出場することはかなわなかった。

「どうしたらいいか悩んだ時期もありました」

鋭いパス、身体の強さを生かしたランが持ち味 【斉藤健仁】

 昨年5月に日本代表に合流したが、精細を欠いた。「日本代表は連勝していましたが、自分のコンディションは上がっていかなかった。6月のイタリア戦でもミスが多くて、エディー(・ジョーンズHC)さんに怒られましたね。ゲーム勘もなかったし、自分のことに一所懸命になってしまって、メンタル的にも余裕がなかったですし、どうしたらいいか悩んだ時期もありました。ブランビーズに行ったという変なプライドで空回りしていましたね」と、本音を吐露した。

 続くトップリーグでも、秋の日本代表の欧州遠征でも調子をあまり取り戻すことができず、結局、立川は、今シーズンはスーパーラグビーでプレーする話には到らなかった。「僕からも聞かなかったですし、エディーさんにも言われませんでしたね(苦笑)。今年はたくさんの選手がスーパーラグビーに挑戦し、うれしい反面、悔しい気持ちはあります……。ただ、オフの間は自分の時間にしたかったです」(立川)

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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