セブンズ日本代表「奇跡の残留」なるか “崖っぷち”で挑む香港、東京大会
指導体制を強化もケガ人が続出
苦しいチーム状況の中で、スピードを生かして活躍している松井千士(同志社大2年) 【斉藤健仁】
2014年度の男子セブンズ日本代表は、年間150日の活動期間すべてに参加する「コアスコッド」9名を選出し、昨秋のアジア競技大会では3大会連続の金メダルを獲得。「アジア最強」を証明してみせた。ニュージーランドで7人制オールブラックスも指導する「世界を知る男」ロジャー・ランドル氏をスキルコーチに招くなど指導体制の強化も進め、アジア王者の勢いのまま、オリンピック予選(総合ポイント上位4チームが出場権を得る)を兼ねた、今シーズンのWSに挑むはずだった……。
だが、コアスコッドの橋野皓介(キヤノン)、小澤大(トヨタ自動車)、渡邊昌紀(リコー)、レメキ ロマノ ラヴァ(Honda)らがリーグ戦などでケガを負ってしまう。また今季のWSは、その国や地域に3年居住すれば出場できるラグビー特有の協会主義ではなく、オリンピックルールで行われており、日本国籍を取得できていないロテ・トゥキリ(北海道バーバリアンズ)、ジェイミー・ヘンリー(PSIコストカッツ)は出場できなかった。
15人制の影響で選手を固定できず
日本国籍を取得して、セブンズ日本代表に加わったヒーナン(中央) 【斉藤健仁】
「選手が所属している企業との折り合いもあるので、私が、メンバーが来るとか来られないとかの話をしてもしょうがありません。今いるメンバーのレベルを上げて勝ちたい」と瀬川智広HC(ヘッドコーチ)は繰り返してきたが、本番の前々日にチームに合流する選手や、ケガ人などの影響で練習が7人に満たないことも……。昨年のアジア競技大会から3月までに招集された選手は実に36名に上るなど指揮官の苦悩がうかがえる。
世界がオリンピックに向けて急激にプロ化の流れが進む中、選手が固定できない日本代表は、3大会目の南アフリカ大会でサモア代表に今季初勝利を挙げたが、最下位(15位タイ)と低迷を続けた。2月には2大会が開かれ、ケガが治った中軸の一人であるレメキ、日本国籍を取得したヒーナン ダニエル(パナソニック)、シーズンが終了した藤田慶和(早稲田大3年)、合谷和弘(流通経済大3年)、松井千士(同志社大2年)らが合流し、攻撃面では一定の改善が見られた。
日本にとって史上初の「8強」を目指す
精神的支柱としてチームを支える坂井主将 【斉藤健仁】
今季のWSは香港(3月27〜29日)、東京(4月4日〜5日@秩父宮ラグビー場)、グラスゴー、ロンドンと残り4大会。コアチームで最下位は自動降格となる。現在、最下位(15位)の日本代表のポイントは「5」、14位のポルトガル代表は「21」と16の差が開いている。オリンピックのアジア予選は11月に開催される予定だが、その先の強化を考えて「奇跡の残留」を果たすためには「ベスト8以上に入って、勝点10以上を重ねていかないと」と瀬川HCは語気を強める。
ただ男子セブンズ史上、WSのベスト8に入ったことはなく、大きなチャレンジだ。それでも9位や10位となると8ポイントか7ポイントを得る。ポルトガル代表が平均3ポイントであれば計33、日本代表が平均7ポイントであれば理論上は並ぶ。いずれにせよ、香港、東京で上位に進出しなければいけない“がけっぷち”にある。