ラグビー日本代表、「ペップ流」で進化 エディーHCがバイエルンで得たこと

斉藤健仁

9月のワールドカップに向けて始動

日本代表のエディー・ジョーンズHCは「W杯までのすべての試合に勝利したい」と語っている 【斉藤健仁】

 いよいよ、ラグビーワールドカップイヤーの2015年、4年目の「エディー・ジャパン」が始動した。

 4月6日から宮崎にて、ラグビー日本代表が、韓国代表と香港代表とホーム&アウェイで対戦する「アジアチャンピオンシップ」(4月18日〜)に向けた合宿をスタート。9月にイングランドで開かれるワールドカップを控えているため、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は「ワールドカップまでのすべての試合に勝利したい。それが今年の成功につながる」と気合い十分だ。もちろん成功とは「ワールドカップで勝利して決勝トーナメント(ベスト8)に進出すること」である。

「ドローン」を使って練習をチェック

日本代表の練習に導入された「ドローン」 【斉藤健仁】

 合宿初日の午後、初めてのグラウンド練習が行われた。まるでバッタの大群がやってきたような音を出して飛んでいたのは、無人ラジコン撮影機の「ドローン」だった。昨年までBKのコーチを担当していたスコット・ワイズマンテル氏の薦めで導入したという。しかも4Kカメラが搭載されており、「ボールを持っていない選手の動きが鮮明に見えます」(ジョーンズHC)。iPadで撮影している映像を見ながら“操縦”している分析担当の中島正太氏は「後ろから撮影することで、選手たちの走っているラインがよく見えます」と、早くもその効果を実感している。

 実際に、合宿初日から「エディー・ジャパン」の代名詞である、9番や10番の横にFWを配置する「アタック・シェイプ」の動きをドローンで撮影。9番を起点にした攻撃では、FWの選手がインサイドをえぐるように走らせたり、10番を起点にした攻撃では横に立っているFWの間でパスを交換したりと、「新しい形」(SH日和佐篤/サントリー)を試した。アタッキングラグビーを標榜(ひょうぼう)する日本代表らしいメニューと言えよう。

 コーチ陣には元イングランド代表選手と元フランス代表選手、そしてウェールズ代表とオーストラリア代表でコーチ歴のある指導者が脇を固める。スポットコーチには、スピードトレーニングスペシャリストであるオランダ人のフラン・ボッシュ氏、1対1のタックルを指導する元オーストリアの13人制ラグビーのプロ選手のマックス・マニックス氏、タックル時のアップ&ダウンのスピード強化を担当する元総合格闘家の高阪剛氏を招聘。ジョーンズHCは「通常のスタッフだけでなく、スペシャルスタッフを追加して、選手たちに最高の状態でワールドカップを迎えるようにしたい」と万全を期する。

「バイエルンに行って恥ずかしい思いをした」

ジョーンズHCは昨年12月にバイエルン・ミュンヘンのグアルディオラ監督を訪ねた 【写真:ロイター/アフロ】

 さらに興味深かったのは、ジョーンズHCが行う練習へのアプローチだった。それは確実かつ明確に変化していた。

 昨年12月、2014年の日本代表を総括する記者会見でジョーンズHCは、帰国する前にサッカーのバイエルン・ミュンヘンを訪れ、長い時間、「世界一のコーチ」と高く評価する「ペップ」ことジョゼップ・グアルディオラ監督と会談していことを明かした。4月2日に行われた講演では「良いコーチになるためには常に勉強しないといけない。私は今年で55歳、コーチ歴20年になりますが、バイエルンに行って恥ずかしい思いをした」と吐露していた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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