bjリーグが大切にしてきたバランス 中野社長が読者の声に返答<後編>

大島和人

bjリーグが今まで理想として重んじていたものと、タスクフォースの考えでは、食い違いや矛盾、課題と思えるものも存在する 【写真:中西祐介/アフロスポーツ/bj-league】

 ターキッシュエアラインズbjリーグが今まで理想として重んじていたものと、ジャパン2024タスクフォースの川淵三郎チェアマンが口にする考えが、すべて一致しているわけではない。例えばホームアリーナの整備を重視する川淵チェアマンと、地方の小会場にまで足を運んで“チームから近付く”ことを重視するbjリーグの考え方は真反対と言ってもいい。

 食い違い、矛盾、課題と思えるものを、bjリーグのトップはどう受け止めるのか。それが後編のテーマだ。「オールジャパンに参加しない理由」「代表選手がbjリーグから出ない理由」といった競技面の質問はバスケファンからも多く寄せられた。企業やオーナーの支えがあるチームと、市民チームの格差問題も今後のポイントになる部分だろう。また経営の透明性、債務問題、入会金とその使途といったbjリーグの内奥についてもさまざまな“声”があった。インタビューの後編では、中野秀光社長にこういったポイントについて、詳細に語ってもらった。

 なおスポーツナビではバスケットボールファン、ブースターからも質問を募集し、その多くを今回の質問に反映させている。今回のインタビューでお聞きし切れなかった分も、中野社長にはお届けした。この稿を読んだ感想について、ぜひページ下の関連リンクにある【アンケート】から投票をお願いしたい。

※本コラムに掲載している読者からの質問は、2月23〜27日に受け付けたものです。なお、多数の方から同様の質問・意見があったため、内容が重複している質問につきましては、代表的な質問文のみを採用させていただいております。

「(NBLと)見比べる機会がなかった」

高いレベルの外国人選手が多く存在することもbjリーグの特徴だが、そこにも賛否両論が寄せられた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ/bj-league】

――川淵チェアマンはホームアリーナをなるべく固定することが集客の前提と考えているようですが、いろいろな会場を巡業するbjリーグのやり方とは食い違いませんか?

 いいえ。代表者会議のときに、長野(信州ブレイブウォリアーズ)の片貝(雅彦)社長が「私たちは地方を回って今に至っている』ということで、質問をしました。川淵さんが「それでうまくいっているならそうするべきじゃないか」と言ってくださったので、私はそれもちょっとホッとしたんです。実はそのとき私も「実はここにいる皆さんにそう指導したのは私なんです。それはいかがでしょうか?」と発言しようとしていたら、片貝社長が先に発言をしてくださった。

 後日役員4人が川淵さんを訪ねた時に、私は川淵さんに「アルビレックスは地方巡業をした(時に観戦に来てくれた)人が(朱鷺メッセにも)駆けつけてくれました」という話もお伝えしました。自分たちから近寄ったことですそ野が広がり、38社のスポンサーが3年で700社を超えたんです。そういう経験をしているので、アルビレックスが(JBL時代も含めて)13、4年歩んできたストーリーも、方法論としてはあるんですということをお伝えしました。

――読者からは「外国人選手枠を減らしてほしい。外国人選手のダイナミックなプレーも面白いが、応援する側から見ればそれに対抗する日本人選手がいないと面白くない」や「日本人の方が応援しやすい」など、外国人がプレーすることについてのさまざまな意見が寄せられています。外国人枠についてはどう考えていますか?

 これは議論されるべきことなのですが、われわれも10年前(のリーグ創設時)に外国人枠というもので悩みました。日本人をたくさん導入する方が、日本人のチャンスが増えるからいいんじゃないかという意見もあるでしょう。bjリーグの場合は、NBAに上がれるか上がれないかという高いレベルの外国人選手に来ていただいています。そういう選手と一緒に練習することで、(日本人選手の)当たりも強くなります。日本人が出ていないからレベルが上がらないという議論もありますし、ああいう人たちとやったおかげでレベルが上がったという考え方もある。どっちが正解というのは、一概に言えないと思います。

 女子は五輪に出ていますが、男子は(しばらく)五輪に出ていません。高校からすぐ企業チームに入る女子って多いですよね。今の議論と似ていて、レベルの高い人たちとのプレーをすぐ体感していけば、レベルが上がるんだろうなと思います。

――「天皇杯に出場してほしいです」や「なぜbjリーグのチームはオールジャパンに参加しないのですか?」など、読者からは直球の質問もありますが?

 シビアな話なんですけれど、JBAの大会に出ている間は収入がなくなってしまうんです。それが最初は厳しいと(各球団の経営者が)言っていました。ただ、われわれもリーグとしては(スケジュールを)空けたんですよ。試合を組まず、何かアクシデントがあったときの予備週として取ってあるんです。ですから参戦しようと思えばできるのですが、全て自腹で来なければいけなかったというのが(参加しない)一番の理由だったと思います。

――「日本代表にbjリーグからほとんど選出されない理由は実力の問題だけなのか?」というものもありました。

 実力が足りないというのも、事実あると思います。それと今までは交流戦が少なかったので、見比べるところがありませんでした。それほどネガティブには捉えていなくて、太田(敦也/浜松・東三河フェニックス)選手も選んでいただいています。プレシーズンゲームではNBLとの交流戦もやらせていただいています。ああいうことが増えれば判断の材料ができて、協会は選びやすくなるのかもしれません。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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