岡田武史氏「日本人に合った型を作る」 FC今治新体制発表会
FC今治の新体制発表会見に臨んだ岡田オーナー(右から2人目)。プロジェクトの壮大なビジョンを語った 【スポーツナビ】
今回のオーナー就任について岡田氏は、日本のサッカーには共通認識としての「型」がないことから、「日本人に合った世界に通用する『岡田メソッド』というものを作ろう」と決断。育成年代からトップチームまで、共通したメソッドを実践するチームとして「10年かかるかもしれないけれどイチからできるチーム」ということで、現在四国リーグに所属するFC今治に白羽の矢を立てた。クラブオーナーの仕事について「僕は経営者のセミナーとかやっていたんですけれど、やってみたらこんなに大変だったんだというのが正直なところ」と苦笑しながらも、「この年齢になってもワクワクできるのはありがたいこと」と実感を込めて語る岡田氏。10年スパンの壮大なプロジェクトは、4月の四国リーグ開幕からスタートする。
以下は、新体制発表会の要旨。
始まりはW杯ブラジル大会
事の始まりは昨年ブラジルで行われたワールドカップ(W杯)でした。あのあとサッカー仲間の間で、日本のサッカーはどうあるべきか、いろいろな議論をしていました。そんな時に、あるスペイン人のコーチと話していたときに「スペインにはプレーモデルと呼ばれるサッカーの型があるが、日本にはないのか」と聞かれたんです。サッカーというのは、僕が選手のときには「蹴っとけ!」みたいな型にはめるのではなく、自由な発想や個人の判断が大切だ、ということで「考えさせる指導」というのがはやっていた。それもあって日本のサッカーは急激に進歩していきました。ところがその上を行っているスペインに型がある。でも彼らの言っている型というのは、よく聞いてみると「型にはめる」型ではなく「共通認識」なんだと。
たとえば、味方がボールを持っていて、相手にプレッシャーをかけられたとき、まずファーストエリア、一番近いエリアにいる選手は何をするべきか。セカンドエリアにいる味方はどう動くべきか。サードエリアにいる味方は……という共通認識のような型を(彼らが)持っていることが分かりました。型があるからそれを破って、驚くような発想ができるのではないか。自由なところから自由なものって、なかなか出ないのではないか。そういう思いから、私はこのたび、日本人に合った世界に通用する「岡田メソッド」というものを作ろうと決めました。
トップから育成まで同じ哲学、プレースタイル
地元の少年団、あるいは地元の中学や高校のサッカー部も巻き込んで、ひとつのピラミッドを作る。そしてコーチを派遣したり講習会を開いたり、いろいろな形でピラミッドを作っていく。そしてその頂点に立つFC今治のトップチームが、面白いサッカーをして強くなっていく。どうなるでしょうか。おそらく全国から、まだまだ日本のサッカーはリスペクトされているので、アジアから育成に入りたいという若者、あるいは岡田メソッドを勉強したいという指導者が集まってくる。そうして集まってきた人たちを、おじいちゃん、おばあちゃんしかいなくなったところにホームステイさせる。おじいちゃん、おばあちゃんが「スポーツマンの食事をどうすればいいか」と料理教室に行く、または英会話を勉強し始めたり。気がついたら、この(人口)17万人の今治が、妙にコスモポリタンで活気がある、そんな街にならないかなと。そういう妙な夢が湧いてきました。