岡田武史氏「日本人に合った型を作る」 FC今治新体制発表会
地域決勝はJ1、J2より難しいかも
「J1、J2より難しいかもしれない」と岡田オーナーは地域決勝の厳しさを理解する 【写真は共同】
先ほどから言っていますが、育成のピラミッドが良くなって、現状でも他県から来ているんですけれど、入りたいと地方から集まってくる。でもおそらくサッカーだけでは知れたものです。すべてのスポーツのアスリートが集まってくる。うちにはアドバイザーで(元プロ野球選手の)古田敦也もいますし(ラグビーの)平尾誠二もいます。古田の野球教室も実はここでやっているんですよ、僕が主宰になってね。そういういろいろなスポーツがきっかけとなって、みんながここに来たい、ここで子供を育てたい、と思えるような街にしていくということですね。
──まずはJFLを目指すことになるが、そのためには四国リーグで優勝して地域決勝という大会で好成績を残すことが必要になる。
簡単じゃないんですよ、実は。特に地域リーグの決勝大会というのは、そんなに簡単にはいかないと思っています。今うちがトライしていることが本当に浸透していけば、大きくメンバーは変わっていないですけれど、今のメンバーでやっていけると思っています。ただJ1、J2とかよりも、ひょっとしたら難しいかもしれない。ここの上がり方が、ポイントだなと思っています。
──今治の人たちの期待感が高まっているが、何かメッセージを。
やっぱり元気が出るためには、みんながひとつになっていく。バラバラでなくみんなが一体感を持つものが必要だと思います。FC今治がなれるかどうか別として、ひとつ今治に誇りを感じて、みんなが一体になれるきっかけは作れると思うんでね。応援していただきたいなと思います。
──岡田さんが来たことで初めてサッカーを知った人もいると思うが、愛媛や今治は野球人気が強いことについて。
僕は野球の人たちが「岡田が来たらサッカーに人気が取られる」とか、そういうのはすごくイヤなんですよね。お互いが一緒になって上がっていけばいいと思っていますから。だからサッカーはぜひ一度、今治のチームとして見に来ていただいて、そうしたら僕らは「もう一度サッカーを見に行こう」という気にさせる自信はあるので、ぜひ一度見に来ていただきたいなとは思っています。
日本サッカーの責任をみんなで分担する
それが岡田メソッドなんですけれど。話せば長くなると思うんですが、今われわれ自身の言葉から作っています。今までの言葉ではない、そして日本人に合ったもの。1対1でゴールが入らないわけでしょ? それでストライカーがいないというのではなく、2対1を作ろうよと。吉武が今日、言っていました。「世界を驚かせるサッカーを日本人にはできるかもしれない」って。僕らはそういうところを目指しています。もちろん集団で戦うサッカーになると思いますが、それを外に向かってどう表現していくかというところまでこだわって、今治は水軍が出て行くイメージでやっているんだから、波が押し寄せるような波状攻撃でプログレッション(前進)するようなサッカーをやっていきたい。そうやって強くなっていきたいとは思っています。
──昨日、練習試合を拝見したが、かなりやり方が変わっている印象を受けた。岡田メソッドの落とし込みは始まっているのか?
もちろん。彼らは今、めちゃくちゃ頭を使って苦しんでいると思いますけれど、もうここ2週間、鹿児島遠征のミーティングからかなり変わってきていますので、本当に期待しているんですけれどね。皆さんご存じないかもしれないけれど、彼らは仕事を持っています。(クラブが)出している給料なんて本当にたかが知れていて、鹿児島遠征で休業補償として3000円しか出せなくてもガッツポーズしてくれるような、ある意味純粋で真剣に取り組んでくれている選手たちです。だから必ずいいチームになると感じています。
──欧州ではクラブチームのサッカーが代表のサッカーを形作っていることが多いが、日本は代表がクラブのサッカーの方向性を指し示す傾向がある。今回、岡田メソッドを作り上げることによって、クラブが作る日本のサッカーというものが実現すると思うか?
クラブが作る日本のサッカーというよりも、僕はそんな大それたことを言うつもりはないですけれど、僕もこの日本サッカー界のひとりの指導者として、責任を分担しないといけないと思っています。民主主義もそうです。みんなが責任を分担するという原則を忘れて、選挙権を行使するだけで批判ばかりしているんじゃなくて、われわれサッカー指導者のひとりひとりが日本サッカーの責任を分担しなければならない。そのひとりとして、僕はうちから(代表選手が)5人出れば、うちのサッカーになるかもしれない。スペインはバルセロナから5人出るようになって変わった。ドイツはバイエルン、オランダはアヤックス出身者。そういうチームになっていこうという目標はあります。でも僕らが日本のサッカーを変えるとか、そういう偉そうなことを考えているわけではないです。