川淵チェアマンが新リーグの構想を提言 bj、NBL代表者会議で訴えた全言葉
bjリーグ代表者会議での質疑応答(1)
ホームアリーナの重要性を説いた川淵チェアマン。代表者に行政が動けるよう努力することを求めた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ/bj-league】
僕に対して恐怖感を持っている方が多いと聞いています。強面ですけれど、心根の優しい男です。皆さんの見解を聞きながら、トップリーグをどうすれば皆さんに愛されるのか。プロスポーツとして成功するのかを考えていきたいと思っています。
僕自身が一番大切に思っているのは、6月の初めまでに方向性を出さないと、リオ五輪予選に出られない。女子チームにとっては迷惑な話です。男子はそれほど大きな話ではないのかもしれない。皆さんの中には五輪選手があまりいないので関係のない話だと思っている方がいるかもしれない。それではバスケットボールは発展しない。日本人が好きなのは五輪に出るか出ないか。代表の強化についても、プロリーグが大きな役割を果たさないと意味がない。そのことを皆さんにもっと分かってもらいたいと思います。プロリーグと代表が両輪で、多くの人から関心を得られ、多くの観衆が見に来る。そして代表が五輪に出ることで、次のリーグも関心を集めることができるわけです。
――解決すべき3つの課題「リーグ統一」「協会のガバナンス」「日本代表の強化」について。ガバナンスの問題について述べられていないが、どう対処していくのか?(浜松・東三河フェニックス)
ガバナンスはルールさえしっかりしていればうまくいくと考えるのは大間違いです。結局は人の問題なんです。バスケットボール界にどんな素晴らしい人材がいるのかさっぱり分からない。これが僕としては一番悩ましい。6月までに多くの意見を聞いて、自薦他薦も聞きながら、できるだけ若い人のほうがいいとは思っています。これが大問題なので、ルールや規約を作ればいいわけではないと思っています。要は人なんです。
――クラブにとってはフロントスタッフも重要だ。フロントスタッフの育成や在り方についてはどう考えているのか?(仙台89ERS)
クラブにとってはフロント、GMが一番大事。クラブの短期、中期、長期の計画や選手の採用も含めて、その人が理解して機能しなければ継続して良いチームにはならない。そういった人たちもしかるべき年俸をもらわなければいけないと思います。そこも当然それなりの年俸をもらうべきだし、それだけクラブに貢献をしなければならないわけです。僕はJリーグ時代にGMセミナーを作って相当な人数を育ててきました。今度Jリーグが一般の人たちを含めてスポーツクラブの経営に対するセミナーを始めます。Jリーグの(村井満)チェアマンに電話して「バスケットボールの人も入れてほしい」と頼んだら申し込んでもいいと言われました。この中でもそういったものを作っていく。世界のマネジメントなどを学ぶことはやっていったほうがいいと思います。勉強をする必要は絶対にあります。
――アリーナの在り方については賛成だが、現実問題として行政にお願いしても言質をとるのが難しい。実際にはどうやって話をしていくのが良いと思うか?(京都ハンナリーズ)
僕はホームアリーナが存在しないことに危機感を持っています。ホームアリーナに行けば、ここがホームだとブースターが感じる、そこに行きたくなる。なじみのある自分の家と感じられるアリーナがあるかどうか。今、各クラブが使っているアリーナは少ないところで3つ、多いところで7つぐらい。それで何がホームアリーナかということなんです。アリーナを借りる苦労は分かりますが、それが今後も仕方がないことだと思わないでほしいと言っている。それがこのきっかけなんです。行政サイドが検討しましょうとなるきっかけは市民の声なんです。行政サイドが一番動くのは市民の声なんですよ。市民の声がないとまるで動けない。行政が動けるように皆さんが努力してほしいんです。6月までに決定するのはほとんど不可能。ただ言質を行政から得て、明確に確認できたら、そのチームは(トップリーグ参入を)優先的に考えることになります。1回で決める方法なんてありません。多くの市民を巻き込むということです。
――地方行政の予算だけでは大きな施設を作ることができない。国の予算まで動かさなければ、我々の考える規模の施設は難しいのだが、一緒に動いてもらうことはできないか?(バンビシャス奈良)
もしも、totoに組み込んでもらえたら、そういった補助もお願いすることができるので可能性がゼロではない。中途半端な施設をとりあえず作って、僕ら(サッカー界)もそれで失敗してきました。中途半端な施設を作っても中途半端なままにしかならない。大きな夢を持ちながら、地道に着実に、多くの市民を味方につけて進んでいったほうが良いです。1年や2年、5年でこれが終わるわけではないので、長い目で見てバスケットボールクラブを地域に密着したスポーツクラブにしようと考えるか。そういった長期的な展望の活動が必要だと思います。
皆さんは10年間苦労してやってこられて、どうしても3年も5年も先を見てやる暇がなかったのではないかと思います。今こそそのきっかけを与えられたので、このクラブの将来はどうあるべきか。どう地域社会の誇りとなり、地域社会の活性化の元になるのか。地域の中にどう生きるのか。原点を考え直して、市民に、行政にアピールしていく。そこからまた始まっていくと思います。やはり地道な活動以外に、成功への道はないと思います。そして、試合が始まれば、魅力的な試合ができるというのが大前提です。
bjリーグ代表者会議での質疑応答(2)
――マスコミでの取り扱いについて、東京のメディアには取り上げられなくても地方では取り扱ってもらっている。そのことについてはどう思うか? チーム名については、企業名は残さず“地域名×愛称”で統一してほしい。(金沢武士団)
企業名について、Jリーグがスタートするときはみんなプロになっていなかったので企業名をつけるのは駄目だと言えたんです。今回はbjリーグとNBLがあって、スタートしているなかで線が引きにくい。企業名がリーグにどう影響を与えるのかは経験してみなければ分からない部分があります。企業名をつけても良いと言ったのは、きちんとした財源を確保できて、ちゃんとした経営ができるクラブがトップリーグにあったほうが良いという認識だからです。少ない給料しか払えないクラブが多く、選手として獲得できるベき年俸をもらえるチャンスを奪うことは選手にとって良いことなのかという思いです。企業名を排除することの価値については試行錯誤しながら、とりあえずスタートは企業名をつけても良いということにしました。とりあえず、企業名は外さずにやると明確に発言していますので、皆さんの反論なり意見がもらえればと考えています。
地方については、極端に言えば一つの地域社会だけでお客さんが1万人入って、入場料収入やスポンサー料が十分なのであれば、それも地域クラブの生き方だと思います。ホームゲームさえしっかり勝っていればお客さんは喜ぶわけだから、一番大事なのはホームでしっかり勝つこと、プロチームの最大の義務だと思っています。全国区になる必要はないというのは、僕がJリーグを作ったときからの視点です。地方のチームをないがしろにするというのはまるで違う。東京のメディアが(バスケットボールの)ことを扱っていないという大きな理由は2つにリーグが分かれていて、実力があるのはNBLだと思われている。それが五輪や日本代表とほとんど関わりがないというか、代表の姿が見えない。ということはバスケットボールの面白みが多くの国民に知れ渡っていないということにつながる。現状はバスケットボール界全体の問題としてそうなっているんです。地方は大事にしないとプロとしては成り立ちませんから。
――bjリーグは各都道府県全域をホームとして活動しているが、チェアマンのイメージとしては将来的に各都市や地域単位でやっていくべきだと考えているのか?(信州ブレイブウォリアーズ)
まったくそのとおりです。例えば、千葉ジェッツは船橋市にありますが、千葉の人は自分のチームだと思ってないと思います。船橋ジェッツなら船橋市民がみんな応援するわけです。東芝ブレイブサンダース神奈川を神奈川県がみんな自分のチームだと思うかという話です。ネーミングをもう一度考え直したほうが良い。やっぱり50〜60万人で1チーム。鹿島アントラーズは4万5000人、ジュビロ磐田は6万5000人ですよ。そういう中であんなに強いチームができた。だから10万人以下はかなりきついけれど、「おらが街の代表」と市民の人たちに思ってもらうことが大事なんです。県名を名乗ることが本当に「おらが街の代表」ということになるのかを真剣に考えたほうがいい。あまりにも漠然としているので、「地域に根ざす」ということを考えると、あまりにも感覚がずれていると思います。
これは僕の私見ですからね(笑)。例えば選手が、日ごろの練習などで感じるのは、ホームの練習場があるか。自分のクラブハウスがあるかどうかというのは選手にとって拠りどころなんです。試合会場もホームアリーナと言いながらそれを感じられないのはまずいんじゃないかということです。長野県民がそれを望んでいて、現にそうなっているというのであればそれはそれでいいんじゃないですか。
――5月にトップリーグに参入するチームを決めるということだが、最終的に決まるのはいつなのか?(島根スサノオマジック)
今の感じでは5月いっぱいで決めたいと思っていますが、うまくいくか分かりません。次のステップもありますし、5月で整理しないと、行政が動いてくれない懸念もあります。いろんな需要を聞いて、ずらす必要があればずらします。なるべく早く決めないと、受け皿として行政の動きが前に向かないということもあるので、現状は5月いっぱいというスケジュールで考えています。