川淵チェアマンが新リーグの構想を提言 bj、NBL代表者会議で訴えた全言葉

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新リーグ構想(2):リーグの新法人について

チェアマン(中央)はサラリーキャップを設けない考えを示す一方、企業名や社員選手は認める方針を示した 【スポーツナビ】

「各クラブにはリーグへ脱退届けを出していただきたい」

 簡単に流れだけ説明します。4月の初めには新法人を設立したい。ということは各クラブにはリーグへ脱退届けを出していただきたいと思っています。それは社団法人にするということです。Jリーグも社団法人なのですが、社団法人はクラブだけが会員です。利益を上げたら、その剰余金はクラブに分配することになります。その点で、株式会社よりは社団法人が良いと私は思います。今日話していることは私が考えていることで決定ではありません。決定するのは3月4日のタスクフォース会議です。それから5月にはトップリーグのクラブの選定をする。その際、各クラブの将来像を比較検討します。現状ですべてを評価するのではなくて、将来設計の可能性についても評価の基準になります。1部、2部、地域リーグという分け方になると思いますが、僕のイメージは1部16チームプラスマイナス4チーム。2部と呼ばず名前は考えたほうが良いと思いますが、2部は20チームプラスマイナス4チームかなと思っています。残りが地域リーグと一緒になるでしょうか。そういった形をイメージしています。新リーグの開幕は、15−16シーズンは移行のための経過措置として、2つのカンファレンスを作り、改変してやっていくのもいいし、今のままbjリーグとNBLを戦って最後はチャンピオンシップを行い、チャンピオンを決めるようなやり方を取っていけばいいと思っています。

 今年の10月からのシーズンは経過措置であっても、新しいリーグの名前でスタートしたいと思っています。そして正式には、16−17シーズンから開幕したいと思います。外国人枠などルールの設定については、10月までに関係者が会議をして方向性を決めていけばいいと思っていますし、その時にどうしても決まらなければ、タスクフォースのチェアマンとして、最終的な決定は、皆さんが良ければ私が行うということです。

新リーグ構想(3):選手の年俸と理念について

「企業名は認める方向でやっていきたい」

 皆さんが一番頭が痛く、できないと言うと思うのですが、サラリーキャップには賛成できません。サラリーキャップは弱者の救済です。現在、7000万円〜4億円のクラブの収入がある。bjリーグは6800万円のサラリーキャップがありますが、仮に新しいリーグができて収入が7億円、8億円になったとすれば、サラリーキャップを6800万円にはしないでしょう。サラリーキャップを1億5000万円に上げるとしても、8億円の収入に対してたった1億5000万円は選手の年俸としておかしいでしょう。成果配分ではない。それはそれぞれのクラブの持つ実力で給料を決めるのが前提であって、なぜサラリーキャップを決めるのか分かりません。それが、皆さんには申し訳ないがこの10年間、協会から差別化されて、いろいろ苦労された中で出た施策だというのは分かります。今まではそれで十分だったのでしょう。そのことについて理解しないわけではありませんが、新しいリーグを作るときに、Jリーグの後を追って、素晴らしい人気を持つバスケットボールを盛んにしていくために、いきなりサラリーキャップを設けて夢を奪うようなことはどうしても理解できません。このあたりも皆さんの意見を聞いて、必要だと納得すれば残せばいいと思います。

 今決めるべきことは最低年俸です。戦力の均一化ということも考えると、ドラフト制も取り入れていいのではないかと考えています。これも選手の立場や権利も考えなければならないので、選手協会とも話し合わなければならないと考えています。移籍金についてなど、考え出せばきりがない。低いレベルでサラリーキャップをやっているようではバスケットボールをやっている選手たちに夢がない。そんなふうに僕は考えています。

 それからリーグの理念についてです。皆さんすでにクラブの理念を持っていると思います。クラブの理念を持っていないのならば僕に言わせれば失格ですね。何のためにクラブを作っているのかという理念がないのであれば、話にならない。リーグの理念についてはみんなで考えなければなりませんが、クラブの理念をもう一度地域社会の中でアピールしていくべきだと思います。

 企業チームの在り方について、企業名は認める方向でやっていきたいと考えています。どうクラブ名称を考えるのかであったり、独立法人には絶対にしなければならないというふうに考えています。社員選手については、選手の希望もある。無視できないし、全員がプロでなければならないとなると、サラリーマンとして会社で働きたい選手の夢を奪うことにもなります。少なくとも15人のうち、10人はプロ契約をしなければならない。そして、社員選手の扱いをどうするかは皆さんの意見を聞きながら決めていかなければならないと考えています。

新リーグ構想(4):マスコミの重要性と新たな収入源

「Jリーグ成功の理由は6割以上マスコミの力」

 マスコミの方が多く来ていますが、とにかくマスコミの露出がほとんどありません。今日の12紙の記事を持ってきました。一番大きく載っているのが報知新聞の「バスケット制裁余波」について。こんなことがサッカーであればもっと大きく記事になりますよ。他の新聞は朝日新聞にちょっと書いてある程度で、バスケットボールは全然記事が載っていない。皆さんこのことを情けないと思わないといけないですよ。bjリーグの記事が載っているのはほとんど試合結果だけ。プロとしてどんな価値があるのかとみんなに言いたいです。アピールがまるで足りていない。

 Jリーグがなぜ成功したのか。僕はその頃から言っていますが、6割以上はマスコミの力です。マスコミの人がJリーグがスタートする前の半年間、毎日あらゆるメディアで書いてくれた。広告宣伝料に換算すると何百億円です。今回の改革、タスクフォースを皆さんに書いていただきました。テレビにも出していただきました。しかしあるスポーツ紙で、タスクフォースの記事がFC東京の武藤嘉紀の身長が1センチ伸びたという記事に負けていました。それぐらいの危機感を持ってほしいということが言いたいです。バスケットボールの将来が懸かった記事が負ける現状なんですよ。マスコミの皆さんがバスケットボールに感じる価値というのは、それを分からずに主張してもどうしようもない。皆さんの苦労は次に生かせばいい。それは忘れて、バスケットボールの将来に向けて、少々の犠牲を払ってでも成功させましょうということを意識してもらいたいです。マスコミの人が記事にもしたいと思わないようなバスケットボール協会では話にならない。日本中では田臥勇太が一番よく知られている。あとは双子の竹内兄弟(公輔と譲次)、オールスターで田口成浩が3Pシュートを22本決めたのでびっくりしました。こんなスポーツニュースが出たとすれば、田口選手の名前は覚えるでしょう。そういうことをする価値がないんですよ。それを認識することが大事だと思います。ブースターの人たちを喜ばせる試合をどうやっていくか。

 toto(Jリーグや海外サッカーなどを対象に取り扱っている「スポーツ振興くじ」)は、プロ野球をtotoの中に組み入れたい(と考えている)。新しい種目を入れたいという動きがあって、バスケットボールのプロ化が成功すれば、バスケットボールもtotoに入れる話も出てくる可能性があると思います。そうなると、施設の拡充についても、サポートをもらえる可能性があるかもしれない。そういったことも収入源として期待できるようなプロバスケットボールにしていきたいと思っています。最後に、駄目な話をするなと言いたいです。先輩やOBはできない話を新人に言うんです。だから皆さんも心の中でできないと考えているのならば、やめてもらったほうがよっぽどいいし、そんな姿勢では成功しない。現状から少し上のプロリーグができればいいなんて考えでは成功しない。ガラッと変えて、10年の苦労を次のステップで生かすんだという気持ち。それをするためにどう努力するかという決意を持って、この何カ月間に臨んでもらいたいと思います。

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