小さな体に秘められたエースの資質 宮原知子、いよいよ開花のシーズンへ
自己ベストを5点以上も更新
日本チームの沈滞ムードを一掃するノーミスの演技を見せた宮原 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
10月4日にさいたまスーパーアリーナで行われたフィギュアスケートのジャパンオープン。日本は小塚崇彦(トヨタ自動車)の不調もあり、男子終了時点で2位の欧州に27.05点差の最下位に沈んでいた。空席が目立ったスタンド同様、何とも言えない物悲しい雰囲気が会場内に漂う。そんな沈滞ムードを一掃したのが16歳の宮原知子(関大中・高スケート部)だった。
演技冒頭で難易度の高いトリプルルッツ+トリプルトゥループのコンビネーションを決めると、後半ではトリプルルッツ+ダブルトゥループ+ダブルループをきれいに着氷。スピンもレベル4を記録し、ノーミスでフリースケーティングのプログラム「ミス・サイゴン」を演じ切った。その素晴らしい演技の後に待っていたのは、スタンディング・オベーションだ。宮原は声援に応えるように小さく微笑んだ。
「すごく気持ち良く滑ることができて、初めてのジャパンオープンも雰囲気的には楽しめました。思ったほど緊張しなかったし、体も動きました。ロンバルディア杯(9月)の時よりもスピードが出てきて、ジャンプもきれいに降りられたと思うので、良かったです」
スコアは非公認ながら自己ベストを5点以上も更新する131.94点。最終滑走の村上佳菜子(中京大)が女子全体4位に終わり、結局、日本は最下位から浮上できなかった。それでも「今回は自分の中でも良い出来」と語る宮原にとっては、満足いくシーズンの滑り出しとなったようだ。
宮原の後塵を拝した村上
新エースとしての存在感を示すはずだった村上は振るわず 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
本人にもその自覚は芽生えているようで、「新しい村上佳菜子を見せたい」と意気込んでいた。しかし、結果は114.38点と振るわず。トリプルフリップがシングルとなり、その後も細かいミスが続いた。新エースとしての存在感を示すはずが、その座を争う3歳下の宮原の後塵をも拝してしまった。「昨シーズンに比べればだいぶマシ」、「滑り出しとしては良かった」と本人は語っているものの、後輩の追い上げに心中は穏やかではないだろう。
村上にとって最大の課題はメンタルだ。「あがり症」を自認する彼女の口からはよく「緊張した」という言葉が発せられる。今年1月の四大陸選手権を制し、意気揚々とソチ五輪に乗り込んだ時も、それまでの練習で好調を維持していながら、試合の数日前に「突然の不安に襲われた」という。
「自分は本当にマイナス思考なんです。もっとプラス思考に変わっていければ、技術面もすべてうまくいくようになるんじゃないかと思うんですけど……」
今大会の前日に「今はすごく自信を持ってやれている」と笑顔を見せたのも、そう自らに言い聞かせることで、暗示をかける意味合いもあったのではないか。