チーム力を上げるコミュニケーション術=バレー眞鍋監督・女子力の生かし方 第9回

高島三幸

眞鍋監督が考えるチーム力を上げるコミュニケーション方法とは!? 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 FIVBワールドクランプリ2014の予選ラウンド第1週(トルコ・アンカラ)を直前に控えた、全日本女子バレーボールチームを率いる眞鍋政義監督。5月に新生「火の鳥NIPPON」を始動させて以来、“世界一”を目指せるチームづくりに奔走してきた。しかし、女子チームのマネジメントに定評のある眞鍋監督でも、一からチームをまとめ上げるのは「毎年、難しいなと感じる」と明かす。

 眞鍋監督は新チームをどのようにまとめ、レベルアップを図ろうとしているのか。指揮官いわく、キーワードは「コミュニケーション」だという。

新チーム始動 明確な目標を全員で共有

 いよいよ28日から、FIVBワールドクランプリ2014が始まります。全日本女子チームは2カ月以上前から集合し、合同練習や遠征を続けています。

 私は五輪を大目標として、それからの逆算方式で4年間の目標とスケジュールを立てています。例えば、12年のロンドン五輪でメダル獲得を大目標とし、五輪への切符を懸けた11年のワールドカップで3位に入る、10年の世界選手権でも表彰台にのぼる。こんなふうにスケジュールを決め、最終目標を達成するために、逆算して何をすべきかを明確にし、選手やスタッフたちと共有していきます。これは、チーム全員のベクトルの先を統一し、常日ごろから意識するためです。一年一年、テーマを明確にしていきます。

 16年のリオデジャネイロ五輪では金メダル獲得を目標にしていますから、戦術の研究はさることながら、4年間の最初の1年となる昨年は、「世界一を知ろう」というスローガンを掲げて、バレー以外の分野も含め、あらゆる「世界一」について意識してきました。
 今年の目標は「世界一にチャレンジ」です。2年後のリオを見据えて、新たな戦術をあらゆるカタチに変化させながら試し、五輪で闘える武器に磨いていこうと思っています。

相手を思う気持ちがチーム力を上げる

 同時に、チーム力も上げていかなければいけません。「チーム力」と一言で言いますが、なぜバレーボールにチーム力が必要かと言えば“助け合いのスポーツ”だからです。サーブレシーブを失敗したらセッターがカバーをしてトスを上げる。それでも失敗したら、スパイカーが無理をしてでも必死でスパイクを決めようとする。あとの5人は、ブロックのフォローに入ります。

 その際、ただパスでボールをつなげるのと、相手を思いながらパスをするのでは全く違います。これはコートに立つ選手しか分からないことですが、トス1つにしても、スパイカーのことを思いながら心を込めてパスをすれば、絶妙なタイミングで打ちやすいトスに変わるのです。この“目に見えないコミュニケーション”が、瀬戸際の勝負を決めるように思います。だからこそ、普段から、仲間同士のコミュニケーションを密に図り、互いの性格や特長などを把握し、「この子のためにパスをつなげたい」と思わせる関係を構築する必要があると思うのです。

 仕事の現場でも、上司や同僚、客先がどんな人間性の持ち主で、どんな思いでプロジェクトに取り組んでいるかということを知れば、相手が使いやすいように資料を作成したり、把握しやすいようにプレゼンをしたりするようになると思います。そうした相手が望むモノをイメージしながらサポートできれば、大きな結果を生み出すきっかけになる。
 バレーもまさにそうです。そこが「データが全て」と言い切れないところで、最後の場面で勝敗を決めるのは、やはり“絶対に勝ちたい”“みんなで勝ちたい”という気持ちや情熱だと思います。

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著者プロフィール

ビジネスの視点からスポーツを分析する記事を得意とする。アスリートの思考やメンタル面に興味があり、取材活動を行う。日経Gooday「有森裕子の『Coolランニング』」、日経ビジネスオンラインの連載「『世界で勝てる人』を育てる〜平井伯昌の流儀」などの執筆を担当。元陸上競技短距離選手。主な実績は、日本陸上競技選手権大会200m5位、日本陸上競技選手権リレー競技大会4×100mリレー優勝。

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