新戦力起用で見えた全日本の課題と光明 日本強化のカギは若手が挑戦できる環境
主将の越川は連敗ストップに涙
今季のワールドリーグ12戦目にしてやっと初白星を飾った全日本男子。試合後、主将の越川(左)の目には涙が見られた 【坂本清】
6月29日に行われたワールドリーグ2014・インターコンチネンタルラウンド最終戦で、日本はドイツをフルセットの末に破り、12戦目にしてようやく今大会初白星を挙げた。
「全日本経験者が少なく、初めての選手がほとんどの中で、最初は、日の丸をつける選手としての自覚が足りないと正直感じました。でも、日本代表として、お客さんの前で勝てない悔しさや惨めさ、ふがいなさといったものを、選手自らが感じる中で、どんどん自覚が芽生えてきたと思います」と越川は振り返った。
今大会は、今年2月に就任した南部正司監督の初陣だった。指揮官は大会中こう言い続けた。
「この大会は若手の思い切った起用を前面に出していく。もちろん勝ちたいですよ。だけど本当に勝ちたいのは、来年や再来年。来年のワールドカップで上位国を倒したいし、再来年のリオ五輪予選で出場権を取って、五輪で勝つのが目標。目先の大会でたとえ勝ち星に恵まれなくても、大型選手や若手選手が成長すれば勝敗以上の価値が残る。人に何を言われても、そこは絶対に自分がぶれてはダメだと思っています」
全日本男子は08年の北京五輪以後、世代交代がまったく進んでいなかったせいで、今年は新戦力を発掘し、経験を積ませることが最重要課題。福澤達哉(パナソニック)が大会途中にけがをしたこともあり、昨年までの主力メンバーの中で今大会を通して選ばれたのは越川と清水邦広(パナソニック)だけだった。
だからといってもちろん負けるつもりで戦ったわけではないし、日本と同じく若手を起用したチームもあったが、それでも勝てなかった。結果、1勝11敗でプールD(日本、フランス、アルゼンチン、ドイツ)の最下位に終わった。これが世界における日本の現在地ということだ。
改めて見えたサーブ強化の必要性
大会を通してサーブの物足りなさが残ったが、最終戦では良い兆候も見られた 【坂本清】
「堅守速攻」をテーマに掲げたチームが、ワールドリーグ開幕まで時間がない中、まず手をつけたのが、ブロックとディグ(スパイクレシーブ)の細かいシステム作りだったが、それもまだまだ未完成だ。
相手の攻撃パターンを緻密に分析し、相手がAパス(セッターの定位置に返ったサーブレシーブ)の時には、打ってくる可能性の高いところにブロックを絞り、それに連動してディグも動く。昨季のVプレミアリーグでパナソニックも採用していた大胆に仕掛けるシステムだが、特に若いミドルブロッカー陣は、どこかを捨てて割り切ることにまだ迷いがあり、どうしても遅れてしまう。理想通りにはまる場面も徐々に増えてきたが、簡単にできあがるものではない。
そして最も物足りなさが残ったのがサーブだ。たとえどんなディフェンスシステムを敷こうとも、サーブで崩さない限り日本に勝機は広がらない。それなのに今大会の日本はサーブが弱く、安全にいってミスをする場面も多かった。
最終戦では、ブロックと連動した戦術サーブがうまく機能したり、勝負所でサービスエースを奪ったりと、サーブが効果的に機能し、勝利につながった。今後、強豪チームに勝っていくには、この試合のサーブを最低限のレベルとして、強さも精度も上げていかなければならない。