コスタリカが“死の組”を突破できた訳 スタイルを貫き、新たな歴史を築けるか?

池田敏明

懸念の残る選手層の薄さ

強い信頼関係で結ばれたコスタリカ。ピント監督(中央)のもと、新たな歴史を築くことはできるか 【写真:Action Images/アフロ】

 選手層の薄さについては、これまでは「うまく隠されている」といった印象だ。ウルグアイ戦、イタリア戦はともに同じメンバーが先発し、似たような選手交代が行われた。2戦とも70分前後にテヘダにかえて守備力の高いホセ・クベロを投入し、試合終盤には前線にスピードのあるマルコ・ウレーニャを入れ、敵陣をかき回す役割を担わせる。3つ目の交代枠は時間稼ぎの意味合いが強いもの。そしていずれの交代も、リードを奪った状況下で行われた。

 ここに一つの懸念がある。確かにウレーニャの突破は疲れが見え始めた相手には効果的で、ウルグアイ戦では投入された直後に見事なダメ押しゴールを奪ってみせたが、果たしてリードを奪われた状況で投入されたり、3トップに不測の事態が生じて先発した場合に、ルイスやキャンベル、ボラーニョスと同程度の存在感を発揮することはできるだろうか。

 集中力の持続や連動した守備といった要素は、慢心さえしなければ決勝トーナメントでも再現できるはずだし、対戦相手を大いに苦しめるだろう。しかしリードを奪われて終盤に突入した場合、選手交代で流れを変えるのは、現状では厳しいと言わざるを得ない。24日(現地時間)のイングランド戦は消化試合となったため、メンバーを大幅に入れ替え、サブ組のコンディションやパフォーマンスを見極めることができる。ここで新たな“戦力”を発掘しておきたいところだ。

決勝Tでも同じ戦いを貫くべき

 いずれにしてもコスタリカは、決勝トーナメントでもウルグアイ戦、イタリア戦と同じ戦い方を貫く必要がある。万が一リードを許しても、冷静さを保ってプレーし続ければ、わずかなチャンスは巡ってくるはず。それを生かすことができれば、W杯の最高成績であるベスト16を越え、新たな歴史を築き上げるのも不可能ではない。

「われわれはもっともっと高い場所を目指している。ロッカールームで、私は選手たちに冷静さを保つよう求めた。喜ぶのはまだ早い。今いる場所より先に進みたい。決勝トーナメント1回戦の相手はコートジボワールか日本、コロンビアになるだろうが、勝利できると実感している。このチームはすでに、非常にハイレベルで歴史的な試合を2度も演じてみせたのだからね」。イタリア戦後、ホルヘ・ルイス・ピント監督はそのように語った。

 就任以降、守備的な戦術が国民の反感を買い、イタリア戦の前にはジョゼ・モウリーニョから「イタリアが間違いなく勝ち点3を獲得する」と言われるなど、逆境続きだった指揮官は、自らの信念でそれらを跳ね返した。

 彼の言葉に異論を唱える者は、もはやいないだろう。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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