岡崎慎司、マインツで上昇した成長曲線 “エゴイスト”な点取り屋への覚醒

ミムラユウスケ

GMも認める岡崎「14ゴール」の価値

ブンデスリーガで今季14ゴールを挙げた岡崎。香川の持つ欧州リーグ1シーズン最多得点記録を更新した 【写真:アフロ】

 普通では考えられないような形の成長曲線を描くのが、日本代表FW岡崎慎司の生き様なのかもしれない。
「シンジのパフォーマンスは、正しく評価されていないと思う」。そう切り出したマインツのクリスティアン・ハイデルGMは、こう続けた。
「ここまでシンジは14点取っているが、ブンデスリーガの得点ランキングでは本当なら1位か2位にいるはずだ。彼はPKを蹴っていないからね。(ドルトムントのFWロベルト・)レバンドフスキの得点からPKを引いたら、得点数でシンジを上回ることはない」

 ペナルティーキックを除いたゴールの数だけを比べると、岡崎のゴール数はバイエルンのFWマリオ・マンジュキッチ、ボルシアMGのFWラファエルについで3位タイの成績だ。もちろん、立派な数字だが、それを「1位か2位」と答えるあたりに、ハイデルGMの岡崎への評価の高さがうかがえる。

「それに、シンジはバイエルンやドルトムントでプレーしているわけではなく、マインツでプレーしているんだ。このクラブで14得点するのは当然、難しい。だから彼がやってのけたことは、ものすごいことなのだ!」

「自分が生き残るために取ってきたゴール」

 4月26日に行われた第32節のニュルンベルク戦で、岡崎は2試合を残して、シーズン14点目となるゴールを決めた。これは日本代表MF香川真司(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)がドルトムントに在籍していた2011−12シーズンに記録していた13ゴールを抜き、ヨーロッパ主要リーグにおける日本人のシーズン最多ゴール記録となる。

 岡崎は声を弾ませて、こう話した。
「代表のゴール数もそうですけど、自分が生き残るために取ってきたゴール。そういうのが記録に残るというのは自分としてはうれしいし、やってきた甲斐があるな。そういう風に思います」

 シュツットガルトにいた昨シーズン、岡崎はリーグ戦でわずか1ゴールしか決めていない。飛躍的にゴール数を伸ばすことができたのは、何故なのだろうか。

 それは、逆説めいているが、“不本意な”昨シーズンを経験したからだろう。

守備に全力を注ぐ岡崎に目をつけたマインツ

 昨シーズンのシュツットガルトは、チームのバランスが崩壊していた。そのため、岡崎は左サイドのMFとしてプレーしていても、チームのバランスをとるためにボランチの位置まで下がって守備に汗を流すこともあった。ただ、当時のブルーノ・ラバディア監督からはあまり評価されなかった。それゆえに、スタメンから外れたり、途中交代を命じられることがほとんどだったし、試合に出ることすらかなわないこともあった。その結果が、シーズン1ゴールという成績だった。

「岡崎は終わったのか?」

 そんな声も聞かれた。ブンデスリーガにやってきて、失意のシーズンを過ごしたのちに、ドイツを離れることになった選手ならば、腐るほどいる。

 しかし、岡崎はそうならなかった。

 シュツットガルトの選手たちがバラバラにプレーしていたからこそ、攻撃的なポジションの選手にいながら、守備にも全力を注ぐ岡崎の姿が目立ったのかもしれない。シュツットガルトでの彼のプレーに注目するクラブがあったのだ。

 それが、マインツだった。

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著者プロフィール

ライター/インタビュアー/コメンテーター。2006年に活動をはじめ、2009年1月よりドイツへ。2016年9月22日、Bリーグ開幕日に再び日本に拠点を移して、活動中。著書(共著執筆含)武尊「光と影」、香川真司「心が震えるか、否か」、「千葉ジェッツふなばし熱い熱いDNA」、横浜ビー・コルセアーズ「海賊をプロデュース」、内田篤人「淡々黙々」、構成:岡崎慎司「鈍足バンザイ!」。Xアカウント ID:yusukeMimura

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