岡崎慎司、マインツで上昇した成長曲線 “エゴイスト”な点取り屋への覚醒
入団当初は清水8番目のFWも…
清水には8番目のFWとして入団した岡崎だが、今では日本代表に欠かせないキープレイヤーとなっている 【Getty Images】
もっとも、昨シーズンの苦い経験は、自身の環境を変えるために役立っただけではない。岡崎自身の意識も大きく変えてくれた。
岡崎はエゴイストになった。
「そんな“イイ人”でよくサッカー選手になれたな」
日本代表のチームメイトであるMF本田圭佑(ミラン/イタリア)からあきれられたこともあるという岡崎は、エゴをむき出しにするタイプではなかった。
むしろ、チームのために汗を流して、勝つことが楽しいのだと考えるタイプだ。もちろん、そこで自分がゴールを決められれば最高だと思っていたのだが……。だから、岡崎は、シュツットガルトでは守備に回ることもいとわなわかった。
“イイ人”から“エゴイスト”への変化
でも、マインツに来てから岡崎はあることに気がついた。
自分がエゴイストになり、ゴールを決めることにこだわったとしても、そこでゴールを決められるのであれば、チームのためになるのではないか、と。
もっとも、気がついただけでは何も変わらない。行動に移さなければ意味がない。
「エゴイストになってみようかなぁ……」
少しずつ、そう考えるようになった岡崎の背中を押してくれたのが、マインツで重ねてきたゴールの数と意味だった。
実際、彼がゴールを決めた試合のマインツの成績は7勝1分1敗。しかも、14ゴールのうち、決勝ゴールが5つ、同点ゴールが3つもある。エゴイストになったチーム得点王が、他の選手にまねできない形でチームに貢献している。
例えば、昨年11月のブレーメンとの試合では、ドイツ代表にも選ばれたことのあるFWニコライ・ミュラーにパスを出さず、ものすごい剣幕で怒鳴られたことがあった。ミュラーがいたのに、岡崎がやや強引にシュートを放ったからだ。それでも、この試合では決勝ゴールを含む、2ゴールをマークした。ゴールを決めることで、チームの勝利に貢献したのだ。だから、あの試合のあと、岡崎はこう語った。
「味方の選手を使わなくて、怒られても、点を取れれば良いと思ってやっていたので。それで1点入って、とりあえず楽になりました(笑)」
怒られても、強引だと非難されてもいい。ゴールを決めることで、チームを勝たせてみせる。
今の岡崎は胸を張ってそう答えることができる。
苦しんでも成長の糧に変えてしまう岡崎の才能
「今までは(日本人のゴール記録のタイとなる)13点取りたいなと思っていたけど、そこにたどり着いたらまた、欲が出てきた。たどり着くまではそんなに欲はなかったんだけど、見えたら、さらにつかみたいという思いが出てきて……」
その次に頭に浮かんだのはこういうことだった。
「14点目を取りたいな」
自らの内側から欲望が泉のようにわいてくる。そして、その欲を満たすためにゴールを決める。エゴイストの行動そのものだ。
普通の選手なら、失意のシーズンを通して自信を失ってしまうかもしれない。でも、岡崎は苦しんだ時間を成長の糧にしてしまう。
その能力こそが、岡崎に与えられた才能なのである。
「鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。」(幻冬舎)
【幻冬舎】
足が遅いからこそ、岡崎は驚異的な成長を遂げてきた。誰にもマネ出来ない話ではなく、みんながマネすることのできそうなエピーソードが満載。
ビジネス書であり、育児本でもあり、スポーツをする子どもたちのメンタルの教則本でもある必読の一冊。
☆岡崎慎司プロフィール☆
1986年4月16日生まれ。兵庫県出身。
滝川第二高校では、1年時からレギュラーとして活躍。
3年連続で全国高校サッカー選手権に出場。
高校卒業後に清水エスパルス入団。
2011年ドイツ・VfBシュツットガルトへ、
2013年ドイツ・1.FSVマインツ05へ移籍。
サッカー日本代表通算38ゴールは歴代3位
(73試合/38ゴール ※2014年4月1日現在)。
受賞歴は、2009年度Jリーグベストイレブン、
2009年IFFHS世界得点王(年間15得点)、
2010年宝塚市特別賞など。174cm、76kg。
ポジションはフォワード。
岡崎慎司オフィシャルブログ『侍』
http://ameblo.jp/okazaki-shinji/