岡崎慎司、マインツで上昇した成長曲線 “エゴイスト”な点取り屋への覚醒
岡崎の長所を見いだしていたハイデルGM
マインツ移籍でFWとして活躍を見せている岡崎。監督、GMからの信頼も厚い 【Getty Images】
「86分のシーンでは、一番前から一番後ろまで走って、相手選手に体当たりした。それがシンジだ。彼がゴールをするためにピッチの上に立っているだけなら、その価値は半分しかない。彼は守備の能力が素晴らしく、さらに、ゴールを決められる選手なのだ。私たちにとっては完ぺきな補強だったよ」
岡崎を獲得する前に、ハイデルGMは詳細な分析をしてきた。だからこそ、岡崎の長所と短所をよどみなく答えることができるし、その能力を生かすためにはどうすればいいのかを熟知している。
「シュツットガルトにいた時、シンジはサイドのMFとしてプレーしていた。でも、彼は100メートル走の選手ではない。彼に弱点があるとしたら、スピードだ。だから、(長い距離を走り続ける)スピードがあまり必要ではないポジションでプレーしているのだ。でも、ペナルティーエリア内での彼は王様だ」
トゥヘル監督も岡崎のプレーに惹かれていた
先日もマインツの中で短距離走のタイムを測定したら、チームで12番目だった。にもかかわらず、味方のパスに合わせて動き出す能力は早い。だからこそ、ゴールまでの距離が短いFWの位置で起用すれば、彼の短所は目立たず、長所が生かされるのだ。それもハイデルGMにとっては自明のことだという。
岡崎に惹かれたのはハイデルGMだけではない。現場の責任者である、トーマス・トゥヘル監督も同じだ。
昨年6月に行われたコンフェデレーションズカップで、イタリア戦、メキシコ戦と連続してゴールを決めている岡崎のプレーを見たトゥヘル監督は、ハイデルGMに何度もこんなショートメッセージを送りつけている。
「誰か(他のクラブの関係者)がオカザキのプレーを目の当たりにしたなら、(移籍金が高騰して資金力の恵まれない)うちのクラブに来てくれなくなるぞ!」
前シーズンから岡崎に興味があったトゥヘル監督
今シーズンの序盤、岡崎が迷いながらプレーしていた時のことだ。監督室に呼ばれた岡崎は、ある映像を見せられている。昨シーズン、マインツがシュツットガルトと対戦する前に参考にしていたスカウティングビデオだった。そこに映っていたのは、シュツットガルトのユニフォームを身にまとってプレーする岡崎の姿だった。シュツットガルト時代に見せていた具体的なプレーを参考にしながら、トゥヘル監督は岡崎に望むプレーを説明していった。
この映像を用意できたのは、シュツットガルトでは評価されていなかった岡崎のプレーをトゥヘル監督が評価していたからに他ならない。トゥヘル監督は、チームのために走れるという岡崎の資質に興味を持っていたのだ。
もしも、昨シーズンの岡崎が誰にでも分かるような活躍を見せていたら、シュツットガルトの首脳陣は彼を手放さなかったはずだ。岡崎がマインツにやってくることもなかっただろう。
低調なものだったと総括されかねないシーズンを、未来への糧にするあたりが実に岡崎らしい。