なぜ強い? 分析不能なローマの快進撃=“想定外”セリエ開幕9連勝の要因を探る

宮崎隆司

圧倒的なまでの安定感で最高のスタートを切る

開幕から9戦9勝、得点23、失点はわずかに1と抜群の数字を残している今季のローマ 【Getty Images】

 誰一人としてこの状況を想定していなかった。

 イタリア・セリエA、2013−14シーズンの第9節を終えたASローマを見ながら言えるのは、およそこの一言に尽きるのではないか。開幕から実に9戦9勝。これは05−06シーズンにあのファビオ・カペッロに率いられ、恐ろしいまでの強さを誇ったユベントスの記録と並ぶ数字である。しかも、今季のローマは同9勝を重ねる中で得点23、失点は何とわずかに1。これはやはり特筆に値する。むしろ、ほとんど奇跡的ともいうべき数字であろう。

 ちなみに、件のカペッロ指揮下にあったユベントスは、その9連勝において得点は18、失点は2。ズラタン・イブラヒモビッチ、ダビド・トレゼゲ、アレッサンドロ・デル・ピエロらを配した攻撃陣を現ローマは上回り、エメルソンとパトリック・ビエラという当時世界最強と言われた中盤2枚をボランチに置き、その背後には後にバロンドールDFとなるファビオ・カンナバーロを、さらにはリリアン・チュラムをも擁していた守備陣を、わずか1差とはいえ、その失点数で凌ぐ。

 数字だけの単純な比較は確たる論拠とはなりえないのであろうが、その実力を測る上でのひとつの指針ならば成り得るのではないか。

 つまり、この得失点差「22」が物語るのは、言わずもがな、圧倒的なまでの安定感である。例えて言えば、現日本代表監督アルベルト・ザッケローニが口癖のように言う「(攻守の)バランス」、これを、モノの見事に具現化させているのが今季これまでのローマと言えるのではないか。

強みは“一貫した戦術”と“多くの選手が点を取れること”

 とすれば、当然のことながら「では、いかにしてローマはそれを可能にしたのか?」との疑問が沸いてくる。

 監督ルディ・ガルシアは、母国フランスでの経験は申し分ないとはいえ、あらゆる意味において特殊とされるイタリアのサッカーにおいては初めての采配である。しかも、その特殊なサッカー界の中でもナポリと並び、最も難しいとされるのがローマというクラブとその街(サッカーへの情熱、ファンの手厳しさで同2都市の上を行く街はない)であり、ゆえに当初(今季開幕前)は懐疑的な見方が大半を占めていた。現に99年から04年までローマを率いたカペッロ以降、いわゆる長期政権は一度もない。

 そのカペッロ以前を振り返ってみても、4季以上を率いた監督は、あの名将ニルス・リードホルム(80年〜84年)にまでさかのぼらねばならない。他はほとんどが1年ごとに、あるいは1年も持たずして代わっている。

 ところが、蓋を開けてみれば件の数字である。したがって、もちろん本稿だけではない、イタリア国内でも実に多くの識者なり元監督や選手なり各メディアなどが競うようにさまざまな分析を行っているが、この9連勝を裏付ける確たる論拠は誰一人として見いだせていないと言うべきだろう。語られるのは、いずれもがおおむね「それらしき」事柄にしか過ぎないというのが実態である。

 例えば、監督ガルシアの「一貫した戦術」。

 各チームが試合ごとに、そして試合中に何度も戦術(システム)を変えるのが半ば当たり前とされる中、今季のローマは4−3−3を貫き通している。唯一、先の第9節(27日、vs.ウディネーゼ)のみ変えているが、それはDFマイコンの退場を受けて強いられたものだ。“自分たちのサッカーをやるのみ”とはおよそ慣用句のごとく使われる言葉だが、これをまさに地でいくのが今日のローマ、ガルシア采配の特徴と言えるだろう。

 さらには、この一貫した戦い方が、DFフェデリコ・バルツァレッティの言葉を借りれば、「回を重ねるごとに安定を、つまり攻守のバランスを確かなモノとしていく、それと同時に、当然のことながら選手個々の役割り分担が明確になっていくのだから、それがさらにチームの連係を高めるという相乗効果を生んでいる」となる。

 そしてもうひとつは、ここ数シーズンに見られる顕著な傾向だが、特定の誰かに依存するのではなく、勝てるチームは「より多くの選手が点を獲る」。これにピタリと一致している点である。現状、ローマの得点者数は10人(リーグ最多タイ)に及ぶ。昨季の同時期比より3人多い。対して、その昨季を制したユベントスは同時期に12人を記録していた。加えて、特定の誰かに依存しないという点で述べれば、この10人の中で最多得点はアレッサンドロ・フロレンツィの“わずか”「4ゴール」に留まる(10位タイ)。得点王クラスのFWを擁さずとも点が“満遍なく獲れる”ことの証左であり、この性質は長いシーズンを戦い抜く上で必ず重要なファクターになるだろう。

(ちなみに、昨季2位にして最多ゴール数73を記録したナポリは、全体の実に40%弱にもおよぶ29ゴールをエジソン・カバーニ=現パリ・サンジェルマンに依存していた。一方、優勝したユベントスのゴール総数は71。チーム内の得点王はアルトゥロ・ビダルとミルコ・ブチニッチの10ゴール。わずか14%に留まる)

1/2ページ

著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント