早慶ラグビーが追求する「食」「独自性」=覇権奪回をもくろむ伝統校の現在地

向風見也

帝京大の1強時代が続く大学ラグビー

長らく日本のラグビー人気を支えてきた早大(赤黒)と慶大(黒黄)だが、ここ最近は両校とも辛苦を味わっている 【写真は共同】

 近年の大学ラグビー界では、「新興校」だった帝京大が飛び抜けた存在となりつつある。

 1970年創部。徹底した栄養指導とトレーニングの合作で鍛えた大男が芝の上に屹立(きつりつ)し、全国大学選手権では前人未到の4連覇中だ。勝てば勝つほど有力選手が入部を希望する好循環を生み出し、日本代表とその候補を計3名擁する今季、シーズンを締めくくる日本選手権での「打倒トップリーグ(国内最高峰リーグ)勢」を目指している。

 一方、伝統校は辛苦を味わっている。1918年創部の早稲田大は、帝京大が王座につく1季前の2008年度、日本で最も古い1899年創部の慶應義塾大に至っては、1999年度を最後に大学日本一から遠ざかっているのだ。

 約1カ月後、2013年度の秋季シーズンが開幕する。長らくこの国の競技人気を支えてきた「早慶」の現在地とは――。

トレーニングの効果を高める「食」

 関東大学春季大会や招待試合、オープン戦が行われ、チームの土台を作る時期である春。フォーカスポイントは「食」だった。全国大学選手権で歴代最多15度の優勝回数を誇る早大は、主に主力格が使う東京・上井草の学生寮に変化があった。登校前の朝、部員各自でおにぎりを作るようになったのだ。小腹が空いた際、それを口にするという。昼食とは別だ。

「なけなしの予算をどこにかけるか。えこひいきになってしまうけど、寮生には飯をたくさん食わせる」

 こう語るのは、就任2年目の早大・後藤禎和監督である。空腹状態を続けると食べたものが脂肪に変わりやすくなるという人体のメカニズムにならい、こまめな間食を意識している。

「食」を見直し、トレーニングの効果を高める。考えることは、和田康二新監督率いる慶大も同じだった。神奈川・日吉の学生寮の食事メニューを再構築、早朝のウエートトレーニングとの相乗効果で体の芯を作ってきた。

 センター宮川尚之主将は、朝6時からのトレーニング前に「補食」として丼2杯の白飯をたいらげ、鍛えて食堂に戻れば朝食を口にする。身長172センチと上背こそ恵まれていない宮川主将だが、体重は83キロ。上半身を隆起させ、「(チーム始動時から)除脂肪体重だけで2.5キロ増えた。キレは落ちていない」と確かな手応えをつかんでいた。

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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