W杯出場のために必要な攻撃ルートの復活=新たな価値を創出した中村と香川の共演

西川結城

W杯出場に“リーチ”がかかった日本

W杯出場がかかる大一番を前にスタジアムで調整を行う日本代表イレブン 【写真は共同】

 日本代表はこれまで、ワールドカップ(W杯)出場の切符をすべて日本国外の地で勝ち取ってきた。1997年、イランとのアジア最終予選3位決定戦をマレーシア・ジョホールバルで戦い、ゴールデンゴール方式の延長戦の末に3−2で勝利。見事初のW杯出場を果たした。続く02年大会は自国開催(日本・韓国共催)により予選は免除され、2度目の予選突破となった05年はタイ・バンコクでの無観客試合で北朝鮮に競り勝った(北朝鮮ホームのイラン戦後にスタジアムで暴動が起き、事態を重く見たFIFA(国際サッカー連盟)がその後、北朝鮮でのホームゲーム開催を中止するという裁定を下したため)。そして、記憶に新しい09年、ウズベキスタンで完全敵地の雰囲気の中、日本は長谷部誠の退場など苦しい状況にも追い込まれたが、最後は岡崎慎司のゴールを守り切り、4度目の出場の切符を勝ち取った。

 日本は今、5度目のW杯出場に“リーチ”がかかった状態にある。26日のヨルダン戦で勝利すれば、14年ブラジルW杯への出場が決まる。また、日本対ヨルダンよりも早い時間帯に行われるオーストラリア対オマーンの結果次第では、引き分けでも最終予選突破となる。

 戦いの地は、ヨルダンの首都・アンマン。過去同様、またしても遠い海の向こうでの決戦となった。今回の代表にもアウエーの環境を物ともせず、世界へのチケットを自力でつかみ取る選手たちの姿を、日本国民は待ち望んでいる。

地の利に自信をみなぎらせるヨルダン

 日本は直前合宿を行っていたカタール・ドーハから移動し、試合2日前の24日にアンマンに入った。選手たちは夕方の到着となったため、24日は宿舎でリラックスして過ごし、試合前日の25日にトレーニングを実施した。

 練習会場は翌日の試合本番の会場でもあるキング・アブドゥラ・インターナショナル・スタジアム。以前からグラウンドの状態が悪いと言われていたが、案の定、所々におうとつが目立ち、芝も深く、日本のパスサッカーを展開するには不向きな環境だと言える。選手たちはこの試合に向けて「予選突破を決める試合で、内容の良いサッカーどうこうは言っていられないと思う」と口々に発しているが、このピッチ状態ではさらにその言葉が現実となることが予想される。

 一方、ヨルダンは今予選、このスタジアムでオーストラリア代表に勝利し、先日は国際親善試合でベラルーシにも土をつけている。今回の日本戦でも同様にジャイアントキリングを狙いにきており、ビジターにとっては不慣れな環境である自らの庭で、今度は日本の足をすくおうと目を光らせている。

 試合前日の記者会見で、ヨルダン代表のアドナン・ハマド監督は「日本はホームとアウエーで差があり、アウエーではオーストラリアとも引き分け、オマーンにも苦戦していた。明日はホームであるわれわれの方が有利だ」と強気なコメントを残した。これに続いてキャプテンのディーブも「このスタジアムで戦うと、幸運が多くある。イランとの試合(09年アジアカップ最終予選)にも勝った。このフィールドでやることをうれしく感じる」と、地の利をアピールした。

 ただ、日本はこれまでの中東の戦いでは劣悪なピッチと酷暑の“二重苦”に悩まされることが多かったが、現在の中東は暑くなく、プレーをする上での支障にならない気候だ。それだけに、スタジアムの環境面にだけ気を配りさえすれば問題はないとも考えられる。あとは、冷静にファイトできれば相手との実力差は歴然でもあり、結果はおのずとついてくる。試合前にあえて強気な発言をする中東各国が得意とする心理戦を相手にしない落ち着きと余裕を携え、自分たちのプレーに集中したい。

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著者プロフィール

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』を発行する(株)スクワッドの記者兼事業開発部統括マネージャー。名古屋グランパス担当時代は、本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その後川崎フロンターレ、FC東京、日本代表担当を歴任。その他に『Number』や新聞各紙にも寄稿してきた。現在は『EL GOLAZO』の事業コンテンツ制作や営業施策に関わる。

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