W杯出場のために必要な攻撃ルートの復活=新たな価値を創出した中村と香川の共演

西川結城

世間の注目が集まるトップ下・香川

世間の注目が集まる香川(中央)の起用法。香川の能力が最大限に生かせるのはどのような方法なのか 【Getty Images】

 日本は22日、ドーハでカナダとの国際親善試合を行い、結果は2−1の辛勝に終わった。試合内容も全体的には低調なものとなり、ヨルダン戦を前にチームの周辺には少々不安な空気も流れている。

 この試合、アルベルト・ザッケローニ監督は「ヨルダン戦に向けた選手のコンディション状態を見るためのもの」と位置付けしていたが、指揮官はそこでさまざまな選手の組み合わせもテストしていった。

 注目は、何と言っても不在の本田圭佑の代わりにトップ下に入った日本の10番・香川真司。これまで代表では本職と言われているトップ下ではなく、常に左サイドで起用されてきた香川が、満を持してトップ下に入っただけに、世間の注目も集まった。

 香川がトップ下で生きる理由。それは彼ロの推進力と得点力にある。スラロームのように左右の動きを入れながら、なおかつスピーディーに仕掛けられるドリブルは彼の武器の一つ。スペースがある場面はもちろん、狭いエリアでも相手の間をぬっていくような侵入もできる。さらに、そのドリブルとセットになったかのようにスムーズにシュートまで持っていける連続性のあるプレーも魅力。周りの選手との連係はもちろん、要所では独力でもクイックな突破で相手を翻弄(ほんろう)できる香川のそのプレーは、動きの方向に制限のない中央・トップ下でこそ、より生きるという考えが広く知れ渡っている。

 ただし、香川がこれらの能力を存分に発揮するためには、ある状態が不可欠になってくる。それは『前を向いたとき』、である。ゴールに向かってプレーできる場合やカウンターアタックが発動されたとき、彼の才能は爆発する。しかし、日々プレミアリーグの屈強なDFに苦労している場面からも分かる通り、フィジカルコンタクトに長けていない彼がゴールを背にしてボールを受けた場合、その能力は日の目を浴びないことが多い。

寸断された日本の攻撃ルート

 カナダ戦、相手選手は屈強なフィジカルと運動量を武器に、日本に果敢にプレッシングをかけてきた。まず、日本のボランチ・遠藤保仁と長谷部のところに相手のダブルボランチが厳しくプレスをかけに来たことで、日本は攻寸撃のビルドアップの第一歩である最終ラインからボランチへのパスルートが寸断された。「ボランチへのパスを消されたので、なかなか有効なビルドアップができなかった」と、最終ラインからのパス出し役である吉田麻也も振り返る。

 日本の攻撃はボランチから攻撃的MF、または最前線のFWにボールが振り分けられていく形が理想だ。ただ、ボランチからの攻撃パターンが繰り出せなくなり、香川を含む攻撃陣は有機的にボールに絡めない時間帯が続いた。岡崎の得点場面を含め、前半のうちに香川や乾らが何度かゴール前に向かってチャンスとなるシーンを作り出したが、そのほとんどがカウンター。つまり、速攻では香川もスペースがある状態でボールを受けられるために前を向きやすく、自らゴールに向かってプレーすることができたが、日本がボールポゼッションをしている場面では、彼がトップ下として効果的なプレーができていたとは言えなかった。ボールを受けても苦し紛れにボールキープするか、バックパスをするばかり。日本の選手の距離感も徐々に遠くなり、相手にセカンドボールを奪われ続けられるようになると、思うように攻撃に絡めない香川の苦しいプレーの印象は余計に色濃くなっていったのだった。

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著者プロフィール

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』を発行する(株)スクワッドの記者兼事業開発部統括マネージャー。名古屋グランパス担当時代は、本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その後川崎フロンターレ、FC東京、日本代表担当を歴任。その他に『Number』や新聞各紙にも寄稿してきた。現在は『EL GOLAZO』の事業コンテンツ制作や営業施策に関わる。

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