長州力「リングをなめたことはないですよ」=3.31奉納プロレス直前インタビュー

長谷川亮

「実話が基になっている映画が好きですね」

意外な映画通ぶりから、プロレスラーとしての哲学、そして引退まで、“長州力の哲学”をたっぷり語ってもらった 【スポーツナビ】

 今年で10回目の記念大会を迎えるZERO1「奉納プロレス記念大会 大和神州ちから祭り」(31日、東京・靖国神社)に長州力の初参戦が決定した。靖国神社にパワーホールが鳴り響く決戦を前に、スポーツナビが長州に独占インタビュー。ドキュメンタリーの秀作にまで目を光らす意外な映画通ぶりから、プロレスラーとしての哲学、そして引退まで。他にぶらされることなくあり続ける“長州力”の現在を語った。

――最近ですとビールのCMへの出演が印象的だった長州さんですが……

 いやぁ、その話はいいよ(苦笑)。

――「夢を叶える」という役柄でしたが、長州さんご自身の現在の“夢”というといかがですか?

 夢が何かって言われても分からないな……。何だろう、まぁのんびりしたいってことかな(笑)。

――今は普段、どんな風にお過ごしなんですか?

 僕はもう結構ワンパターンなんです。家でのんびりしてるか、道場へ行ってトレーニングしてるか。家と道場の行ったり来たりで。家ではテレビを観たり、映画を観たりしています。

――長州さんは映画好きだという話をお聞きしました。

 観てるとリラックスできるから好きだね。最近は機械が壊れちゃったんでムービープラス(映画専門チャンネル)を観ています。あとはディスカバリーチャンネル、ヒストリーチャンネルとか。ああいうのを観てるとボケーっとできて僕はいいんですよね。

――ディスカバリーチャンネルやヒストリーチャンネルというと、ドキュメンタリーがお好きなんですか?

 好きですね。映画もドキュメンタリーが好きです。でも最近は、『アルマジロ』っていう観たかったやつが観られなくて。

――動物のドキュメンタリーですか??

 そう思うけど、アフガンへ派兵された若い兵士の話で……

――あー、分かりました。デンマークの若い兵士たちが戦場で変わっていく姿をとらえたドキュメンタリー映画ですね。

 あれが観たくて観たくて。でも渋谷の小っちゃいところでしかやってなくて、夜でも行こうと思ったんだけどちょっと時間が合わなくて。

――自宅でご覧になる以外に映画館へ出掛けることもあるんですか?

 いやないんだけど、それは観に行こうと思って。ドキュメンタリーとか、実話が基になった映画ってあるじゃない。そういうのは好きだね。『アルマジロ』は前から気にはなっていて。でも映画は基本的に何でも観ます。

――何かオススメだったりありますか?

 いやぁ、映画を観る人っていうのはみんな好みがあるから。僕もそんなにジャンルにこだわってる訳じゃないし。

――では最近はそうやってトレーニングするかゆっくりされることが多いと。

 そう。

――今もトレーニングを欠かさず、今後も「生涯現役」でしょうか。

 いや現役っていうか、もう一線も二線も引いてるから。

――以前とは違った心持ちでプロレスをされているのですか?

 悔しいけど、こればっかりは現実問題。でもトレーニングは好きだから。

――トレーニングすることが日課になっているというか。

 そうですね。そういう自分のサイクル、リズムになってますよね。

「橋本2世や坂口2世に教えることは何もないよ」

昨年1月はかつて激戦を繰り広げた橋本真也の子供である大地とシングルマッチで対戦した 【t.SAKUMA/佐藤崇】

――今回は実現しませんでしたが、タッグ結成を希望された(橋本)大地選手でしたり、正月には坂口征二2世・征夫選手とのタッグ結成がありました。そういった2世選手との対戦・絡みというのはいかがですか?

 なんか皮肉なことにそういうことになってますね。そういった意味じゃ役割、役目的なものがあるのかもしれない。でも教えることは何もないけど、ちゃんとやることをやってリングに上がらないと大きな事故に繋がっちゃうから。そういうことはきちんと言ってやろうかなって思ってます。

――「やることをやってリングに上がる」というのは、長州さんが戦いの中で学んだ心構え・哲学でしょうか?

 リングに上がるんだったら、やるべきことをやっておかないと。やるべきことをやっていても、事故は起こる訳だから。上がるまでは「ゆっくり、慌てるな」とかそういうことを言えるけど、もうリングに上がったら守れないからね。上がってしまったらもう自分は自分で、自分のことをやるっていうだけだから。

――やはりリングに立つ以上は、それに足る準備をしていなければならないと。

 それが当然じゃないかなと僕は思ってます。僕は周りからどう見られようが、リングをナメたことはないですよ。反対にちょっと怖いなって思うようなことすら、よぎることもあるし。だから道場に行くのかなとも思うし。

――長州さんでもリングを怖いと思うことがあるのですか?

 上がる前はちょっといろんなことを考えたりするよね。昔とは違う。昔は勢いでリングに上がれたけど。

――昔はそういうことはなかったと。

 昔はないね。もう勢いで上がっちゃっていたから。

――では今トレーニングするのは、体を鍛えるのと同時にそういう気持ちをなくすため、という面があるのでしょうか?

 いや、練習してる時はそういうことは考えてやってないけど、とにかく自分が動ける、自分で自分を守れることはやっておかないと。

――それができている限りは、リングに上がり続けるお考えでしょうか?

 それは分からない。僕はもういつリングの上で靴を脱いで、「辞めた!」ってやってもいいと思ってるから。

――2世選手の話に戻りますが、今回はタッグ結成ならなかった大地選手ですが、1度シングルで対戦して父親の橋本真也さんを思わせるところがありましたか?

 いや、そんなアレは全くない。そういう風にマスコミさんは言うけど、全然別ですよ。そんなものを本人が考えてやっていたら、どんどんどんどん時間が経っていくし、息子は息子ですよ。

――どうしても我々はそういう見方をしてしまうのですが、そうではないと。

 全く違いますよ。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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