ファーガソン監督が示す香川への信頼=常に計算できる存在となるために

寺沢薫

勝負はロンドンでの再戦に持ち越される

先発出場した香川(右)は76分までプレー。平均点の評価が多くを占めた 【Getty Images】

 オールド・トラフォード(マンチェスター・ユナイテッドの本拠地)で行われたFAカップ準々決勝屈指の好カードは、劇的なゲームとなった。開始の笛からわずか10分強で、ユナイテッドがハビエル・エルナンデス、ウェイン・ルーニーのゴールでチェルシーから2点を連取。チャンピオンズリーグ(CL)でレアル・マドリーに敗れたショックを完全に払拭(ふっしょく)したかに思われた。

 だが、後半になると疲労から失速し、徐々にチェルシーが攻勢に転じる。59分に交代出場のエデン・アザールが、そして68分にカウンターからラミレスがネットを揺らしてあっという間にスコアはタイに戻った。その後は、試合後にアレックス・ファーガソン監督が「敗退しなくてラッキーだった」と話したように、いつチェルシーが逆転してもおかしくない展開だった。

 幸い、フアン・マタに訪れた決定機を守護神ダビド・デ・ヘアがビッグセーブでしのいだこともあり、試合は2−2のまま終了した。FAカップは中立地ウェンブリー・スタジアムで行われる準決勝まで延長戦は行われず、ホーム&アウエーを逆にしての再試合で決着をつけるため、勝負はロンドンでの再戦に持ち越された。

左サイドで76分間の出場

 この試合、香川真司はスターティングイレブンに名を連ねた。ハットトリックを決め、『BBC SPORT』と『スカイスポーツ』のウェブサイトで週間ベストイレブンに選出されたノーウィッチ・シティ戦から、初めてのピッチイン。スタートポジションは2列目の左サイドで、大方、試合前に主要各紙が予想した通りの先発出場だ。同じく火曜のCLでメンバーを外されたルーニーがトップ下に入り、右サイドはナニ、トップにはロビン・ファン・ペルシーではなくエルナンデスが配された。

 5分、電光石火の先制点は、マイケル・キャリックのロングボールにエルナンデスが抜け出して決まった。絶妙なタイミングでゴール前に走り込んでいた香川もフリーだったが、ポジション争いに燃えるひとりである“チチャリート”は、ループ気味のヘッドで自らネットを揺らすことにこだわった。その6分後、11分の追加点はフリーキックだった。ルーニーの蹴ったボールは、誰にも触れられないまま赤と青のユニホームの頭上を越え、そのままネットに収まった。

 前半はその後もユナイテッドのペースだった。香川は対面するチェルシーの右サイドバック、セサル・アスピリクエタのオーバーラップに対応する仕事に追われつつも、攻撃時はルーニーの動きに合わせて頻繁に中央へと移動し、チャンスメークに励んだ。25分には中央でボールを受けてターンすると、左サイドの空いたスペースに上がってきたパトリス・エブラにパスを供給。エヴラのクロスにルーニーが合わせた。ここはGKペトル・チェフに阻まれたが、香川は決定機の起点になった。

 後半途中からは、エルナンデスに代わってファン・ペルシーが投入された場面を機に、ルーニーと香川がポジションを入れ替える。同点に追いつかれた後の75分には、そのルーニーとの連係で左サイドを崩し、敵陣深くまで侵入した香川がクロスに持ち込む場面もあった。そしてその1分後、ダニー・ウェルベックとの交代で香川はピッチを後にしている。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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