男子マラソン、内定ゼロでも悲嘆無用の理由=世界陸上国内選考で見せた“攻めの走り”
びわ湖毎日マラソン、日本人トップの4位でゴールする藤原正和 【写真は共同】
我慢の10年 藤原正和の復活劇
焦点は勝負に移った。34キロ地点で、日本勢4人、海外勢3人に絞られた先頭集団から藤原が前へ。集団は崩れなかったが、「年齢的にこれが世界へのラストチャンス。今回ダメなら、マラソンに区切りをつけることになるかもしれない」という覚悟が、31歳の藤原を動かした。37キロすぎからキプルトらにじりじりと離されても、日本人トップは譲らなかった。
03年、中大4年生だった藤原は、びわ湖で初マラソンに挑み、いまだ日本学生記録として残る2時間8分12秒をマークした。同年の世界選手権(パリ)代表に選ばれたが、故障で現地入り後に出場を断念。その後も故障が重なり、マラソンから遠ざかった期間も長かった。
10年の東京マラソンで優勝を飾ったが、2時間10分を切れないまま10年が経過しようとしていた。復活の兆しが見えたのは昨年9月のベルリン。2時間11分31秒でケニア勢以外最上位の10位に入った。1月に貧血症状が出たが、「妻の料理でリカバリーできました」と藤原。桃色のシューズには愛娘の名前の刺繍。世界選手権への原動力を家族が足元から支えた。
10年ぶりに覚醒した藤原は、「日本人トップを狙っているようでは世界と戦えない。1人でも前の外国人を抜こうという気持ちでした。8分台は最低限。選考のテーブルに乗ることはできたと思います」。高い意識に支えられ、再び世界へのチャンスをつかもうとしている。