bjリーグ開幕! 群馬、東京が参入、台風の目は岩手=バスケット

柴田愛子

仙台の上位進出の鍵はリバウンド

 ここ数年プレーオフから遠ざかっている仙台89ERS。2季目となるロバート・ピアスHCのもと、昨季以上に走るバスケットを目指す。「選手の能力からみても、もっと走って速いテンポでバスケができると思っている。また今季はもっと日本人選手には得点に積極的に関わってほしい」とピアスHC。今季は第1、3クォーターがオンザコート2(外国籍選手2人まで)になることから、日本人の出来不出来が大きく試合に影響してくる。それだけに、日本人選手にはさらなる奮起を期待しているという。

 特に薦田拓也に対しては「今シーズンどうやって新外国籍との連携を強めればいいのか、練習でも悩みながらプレーしていた。プレシーズンではアグレッシブに得点にからもうとしていたので、彼には期待している。アグレッシブにプレーし続ければ、トップクラスの選手になると信じている」と大きな期待を寄せる。

 薦田も「去年は待っていた時間帯が多かったので、なかなか点に絡めなかった時間帯も多かった。今年はコーチのやろうとしていることは理解しているので、そこで自分のやれることをもっとアピールしていかないといけないと思っている」と意気込む。

 今季はサイズがないこともあり、リバウンドがキーになってくる仙台。「リバウンドが取れなければ、速攻もできない」と日下光がいうように、得意の速い展開に持っていくためにもリバウンドが当面の課題となりそうだ。

群馬、東京が加わった関東ダービーも見逃せない

 昨季は活動を休止した東京が、東京サンレーヴスとチーム名を新たにbjリーグに戻ってきた。前チーム東京アパッチの顔でもあった青木康平がチームに加わり、再び青木幹典HCを迎えて、以前の東京カラーを引き継ぎつつも、新生東京としてのスタートを切る。

 しかし、早くも不安材料が山積みだ。外国籍選手の合流が遅れ、チーム練習が思うように進まない上に、主要メンバーである青木、伊藤拓郎がけがで離脱するなど、チーム状況は非常に厳しい。新規チームを率いるのは3チーム目の青木HCだが、「準備はかなり遅れている。開幕までに100の状態にもっていきたかったが、7割程度にもっていければ」と表情を曇らせた。

 チーム調整の大幅な遅れは、プレシーズンゲームで如実に表れた。チームとして連動した動きができず、ターンオーバーを連発。高さを生かしたインサイド勝負でも、リングをとらえることができない。「高さがあるのに相手にリバウンドを取られてしまっては勝てないですね」と青木HCの表情は硬い。チームの起点となるジョナサン・ジョーンズのコンディションが上がってくれば、オフェンスの展開も変わってくるだろう。また青木、伊藤が復帰すれば、ターンオーバーも減ってくるだろうし、よりボールが動くようになる。しかしキーマンがプレシーズンを欠場していることもあり、実戦での調整不足は否めず、シーズン序盤はかなり厳しい戦いとなりそうだ。

 東京とともに今季から新規参入する群馬クレインサンダーズ。HCには大学リーグで指揮をとっていた林正氏を招き、タイムシェアを取り入れたバスケでbjリーグに挑む。タイムシェアとは、ベンチ選手を含めた全員がプレーングタイムをシェアし、ゲーム展開によってチームが変化していくというものだ。「米国のNCAAでも限られたチームしか取り入れていないので、珍しいかもしれない。しかし長年大学でタイムシェアの研究をやってきたので、新たに取り組むスタイルではない」と林HCは自信をみせるが、今までbjリーグではタイムシェアを取り入れたチームはなく、どこまで通用するかは未知だ。

「選手は戦術や自分の役割に関しては理解してくれている。あとはマッチングだけ。しっくりくるようになるには100日くらいかかると思っているし、10月末くらいにいい形になるのでは」と林HCは実戦を通して調整していく考えだ。日本人、外国籍選手も若手を集め、育てていきたいと語る林HC。そんな若手中心のチームを引っ張るのは浜松から地元群馬に戻ってきた岡田慎吾と、同じく浜松から移籍してきた友利健哉だ。チャンピオン経験のある2人がチームにもたらす影響は大きい。友利は「個々のベクトルがバラバラにならないように、試合を通して必要なことを伝えていきたい」と力強く語る。タイムシェアを駆使したチェンジングディフェンスが、どこまで通用するのか、群馬の戦いぶりに注目だ。

優勝で締め括りたいと意気込む千葉ジェッツ

 2シーズン目に挑む千葉ジェッツは前岩手HC代行の冨山晋司HCを迎え、全員バスケでプレーオフの地の有明を目指す。昨季は主要外国籍選手の個人技に頼っていた部分も多く、彼らの波が大きくチームの勝敗に影響した。シーズン通して好不調の波も激しく、最終的にイースタン10チーム中9位と悔いの残る結果となった。

「今季は全員が得点を取りにいって、全員で守ることを意識してプレーしている」と田中健介は「外国籍選手を集める際に、スキルがあるかどうか。また走れる選手であることを重視した」とし、サイズはないがよく動くのが今年のストロングポイントだと語った。今季でbjリーグを旅立つ千葉ジェッツ。佐藤博紀は「今年でbjリーグは最後なので、優勝して終わりたいと思っています」と意気込みを語った。

「最もディフェンスの素晴らしいチームにしたい」

「一番近くて一番遠いプレーオフの地の有明」そうブースターが嘆くのが、オリジナル6(リーグ創設時の6チーム)で唯一プレーオフ経験の無い埼玉ブロンコスだ。昨季はHCの交代にはじまり、外国籍選手の離脱が相次いだ。その結果、シーズンを通してチームが落ち着かず、イースタン最下位でシーズンを終えることとなった。新たにHCに就任したのはトレイシー・ウィリアム氏。「bjリーグで最もディフェンスの素晴らしいチームにしたい」と宣言するほど、ディフェンスに力をいれてチーム作りに取り組んでいる。大柄な見た目とは裏腹に、綿密に戦術を組み立てるタイプのようで、練習では何度もプレーを中断して細かいコーチングをするという。今季から加入した山城拓馬は「コーチはディフェンスに関しては一切の妥協はない。コーチの求めるバスケットはとても緻密なので、一つ一つ自分たちの中でしっかり消化していかないと、それをプレーで表現できないと思う」と必死に取り組んでいるという。

 今季もジョン・ハンフリーがチームの核となるだろうが、勝敗のカギを握るのは北向由樹だろう。「HCからは、打てる状況ならシュートを狙え、とにかくパスをするなと言われている。勝負しないバスケットは求められていない。自分が主役になるつもりでプレーしたい」と昨季以上にシュートを狙っていくと意気込む。今季こそは……といい続けて8シーズン目。「埼玉は負けるだろうと思っている人たちの予測を裏切っていきたい」とウィリアムHC。「近くて遠いプレーオフの地の有明」とはもう言わせない。

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