米球宴史上最多得票、ハミルトンのジェットコースター人生

出村義和

MLBオールスターファン投票で史上最多得票を獲得したハミルトン 【Getty Images】

 圧倒的な得票数だった。その数、実に1107万3744票。昨年のホセ・バウティスタ(ブルージェイズ)を約400万票も上回る史上最多記録だ。
「感謝にたえない。自分にとって、ファン投票で選出されることはとても特別なこと。そして、本当にエキサイティングなことだ」

メジャーを代表するファイブツールプレーヤー

 MLBオールスターゲーム(10日・カンザスシティー)の出場メンバーが発表された1日(日本時間2日)、トップ投票で選ばれたジョシュ・ハミルトンは誇らしげに語った。ダルビッシュ有が所属するレンジャーズの主砲だ。これで5回連続のファン投票による出場。しかし、この想像を絶する得票数を前に、驚くと同時に新たな感激に浸っていたようでもある。

 打率3割1分9厘、25本塁打、そしてリーグトップの73打点(数字は選出時点のもの)。選ばれるにふさわしい成績。5月8日の対オリオールズ戦では史上16人目の1試合4本塁打という爆発力も見せた。走攻守すべてに秀でたメジャーを代表する、いわゆるファイブツールプレーヤー(肩の強さ、守備力、スピード、打撃力、パワーの5つの能力に優れた選手)である。

繰り返されてきた栄光と挫折

 だが、ここにたどり着くまでには数々のアップダウンを繰り返してきた。ジェットコースターのような野球人生。

「こうして過去の話をすることは、カウンセリングと同じような効果を生むと医師から言われている。話をしながら、忌まわしい過去と向き合うことは意味のあることだ」
 ハミルトンがそう語ってくれたのは、2007年春のことだった。ヤンキースのキャンプ地タンパ。当時はレジェンズ・フィールドと呼ばれていたメーン球場、そのビジター用の狭いクラブハウスの小さな丸椅子に、まだレッズの一員だったハミルトンは静かに腰掛けていた。今では想像できないような小さな、自信なさげな声だった。

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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