米球宴史上最多得票、ハミルトンのジェットコースター人生

出村義和

コカイン及びアルコール依存症で入退院を繰り返す

 それでも彼は、ドラフト全米1位でデビルレイズ(現・レイズ)に指名された当時のことから、コカイン及びアルコール依存症で入退院を8回繰り返したこと、さらには信仰心の熱い祖母に助けられて立ち直ったことまで手短に語った。そして、再発を防ぐために専門のスタッフがいることも明かしてくれた。

 07年4月、開幕戦に代打出場、プロ入り8年目にしてデビューを果たす。鳴り止まぬスタンディングオベーション。その年限りで複数トレードによってレンジャーズに移籍したが、そのとき立ち上がって拍手を送っていたファンの多くは、今年もハミルトンに一票を投じたに違いない。

レンジャーズ移籍後に花開いた才能

 それはともかく、レンジャーズ移籍後のハミルトンの活躍は目覚ましいものがあった。その名を一躍全米に轟かせたのは、実は08年のオールスターゲームの前日に行われたホームラン競争。ハミルトンは、その晴れやかな舞台で、第1ラウンドで新記録となる28本のホームランをヤンキースタジアムのスタンドにぶち込んだのである。

 その年、130打点で打点王。しかし、翌09年の8月にはバーにいる姿を報じられ、禁を破ってアルコールを口にしたことが発覚する。謝罪。そして、同様のことは今年2月にも起こった。つらい時期を支えてきたケイティ夫人との喧嘩がきっかけとなって、また飲酒。そして、発覚。キャンプ地での謝罪会見では聖書を持参し、その一節を朗読して二度とアルコールを口にしないことを誓った。

 そして、迎えたシーズンがこの見事な成績。こうした紆余(うよ)曲折を経たストーリーは、どうやらハリウッドでも映画化されそうだ。レンジャーズといえば、ダルビッシュ有の動向に目が向きがちになるが、この人間臭い31歳のファイブツールプレーヤーの今後にも大いに注目したい。

<了>

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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