ジャンプ週間で日本が見せた上昇の兆し=好成績の裏にあった取り組みとは?
記念大会となった伝統のジャンプ週間
ジャンプ週間第2戦で表彰台に上がった伊東大貴。悲願のW杯初優勝にあと一歩のところまで来ている 【Getty Images】
大本命のグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)が開幕2連勝を飾ったことから、ジャンプ億万長者誕生が現実味を帯びてきたが、第3戦でチームメイトのアンドレアス・コフラーが優勝し、史上2人目のグランドスラムはならず。しかし、全4戦のジャンプ総合得点で競うジャンプ週間総合優勝はシュリーレンツァウアーが射止め、2位には同じくオーストリアのトーマス・モルゲンシュテルン、3位にコフラーが入った。
ここ数シーズン、オーストリアの強さが際立っているが、今季はシモン・アマン(スイス)の不調、アダム・マリッシュ(ポーランド)の引退で、オーストリア独走に拍車がかかった。ジャンプ週間でもオーストリア勢の“身内バトル”が繰り広げられたが、その中でオーストリア勢の表彰台独占に割って入る好成績を収め、一躍注目チームとなったのが日本だった。
日本勢が見せた“予想外”の活躍
3年間のフィンランド武者留学経験がある竹内はフィンランド人記者から質問攻めに 【小林幸帆】
過去3シーズンの日本勢の表彰台は合計わずか6回。昨季に至ってはゼロだった。それがシーズン大一番のジャンプ週間で連日の表彰台となったのだったから、予想外ととられるのも当然ではあった。
伊東を中心に初戦から強いインパクトを与えた日本勢に、欧州のメディアは飛びついた。もともとアジア勢として孤軍奮闘する日本は、39歳ながら一線で飛び続ける葛西紀明(土屋ホーム)のように抜群の知名度と人気を誇る選手の存在もあって、ジャンプ界ではそれなりの地位を築いている。しかし、予選や試合当日に飛び終わってチームキャビンへと引き上げる日本選手が外国人記者につかまり、「なんでこんなに強くなったのだ?」「秘密は?」と質問攻めにあうというのは近年では珍しい光景だった。
日本躍進のカギは、遠征でのストレス対処
日本を率いて2シーズン目を迎える横川朝冶ヘッドコーチが、就任にあたり最初に手をつけたのは「遠征中のストレスをなくすこと」だった。「技術では上回っているのだから変えることはない。持っているものを出せばいい」と技術面には自信を持っていた横川コーチにとって、直面したのは「いかに試合で力を出し切るか」ということであり、解決策として「遠征中のピリピリムードをなくし、日本にいる時と同じような雰囲気をつくる」ことを目指した。
ライバル国にも見破られるほど深刻だった日本チームの遠征ストレス――今回のジャンプ週間で横川コーチをはじめとしたスタッフの努力が実を結びつつあることが証明されたのだが、とりわけ気持ちの変化がダイレクトに結果として出たのが竹内だった。