「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回 Baseball5 日本選手権」 野球型アーバンスポーツが起こした革命は絆と熱気を生んだ一日に
野球型アーバンスポーツ「Baseball5」における日本の頂点を決めるべく、立川で熱戦が繰り広げられた。
(取材 / 文:白石怜平)
ボール一つでどこでも、誰でもできる野球型アーバンスポーツ
現在は80以上の国・地域以上で行われており、2026年にはダカールで行われる15歳から18歳までを対象にしたユースオリンピックの正式競技となるなど、更なる発展が期待されている。
大きな特徴は「ボール一つでどこでも、誰でもできる」こと。軟らかいボールを使うのみで、グローブやバットは使用しない。
さらに会場ではDJブースで音楽が流され、MCの掛け声と共にスタンドからの歓声が選手のプレーを引き立たせ、時代の先端を走るアーバンスポーツらしい雰囲気が醸成されている。
ユースでは2年連続で横浜隼人と市立船橋の対戦に
昨年11月下旬から12月にかけて、15歳以上が対象のオープンの部で3ブロック(西日本・中日本・関東)とユース(ここでは14歳〜18歳)の予選が行われ、勝ち抜いたチームが集結した。
本大会ではまた一つ大きなムーブメントが起きた。高校・大学野球史に残る活躍を見せ、プロでは北海道日本ハムでプレーした斎藤佑樹氏がBaseball5 JAPANのスーパーバイザーに就任した。
斎藤氏はBaseball5について開会式での挨拶や、直後に行われた記者会見で「野球界に革命を起こすと確信しています」と述べた。
従来の慣習からアップデートされた画期的な取り組みで、昨年同様に野球部やソフトボール部、さらにはマネージャーもユースの選手としてプレー。
そのユースの決勝は現役高校生のチームである「横浜隼人Aggressive」と「市立船橋5」の対戦となった。
横浜隼人高校は男子・女子それぞれ硬式野球部員で構成され、昨年は「横浜隼人高等学校A」として優勝している。今回はAggressiveに加え、「横浜隼人Brave Heart」と3年生による「NEXUS65」の計3チームが出場した。
決勝戦は第1セットから白熱した展開となる。両者一歩も譲らず、5回を終え3−3の同点に。その後延長戦は8回まで進み、市立船橋5が先取した。
ユースの部は横浜隼人Aggressiveが頂点に輝き、同校としては2連覇を達成し。男性MVPは星優大、女性MVPは蛭田真白が選出された。
5STARsが”守り”と”絆”で初優勝
5STARsは21年9月に誕生して以降、第1回の覇者である「ジャンク5」らとともに日本のBaseball5を牽引している。
上述の国際大会で日本代表を務める六角彩子と村山智美の2人で立ち上げ、現在は六角とともに世界の舞台で戦い続けている數田彩乃も中心を担う。
5STARsの初戦は昨年に続きジャンク5と対戦することになった。
ジャンク5も日本代表を輩出しており、侍ジャパンBaseball5代表の指揮官でもある若松健太監督のもと、同じく侍ジャパンで主将を務めた島拓也など4人の代表経験者が名を連ねている。
昨年10月のワールドカップで共に日の丸を背負った選手同士が、ここではライバルとしてしのぎを削った。
昨年は0−2で初戦に敗れた5STARsは、一年かけて鍛え直した。主将の小暮涼はこの間の取り組みについてこう語った。
「まずは個人の能力アップ。代表2名がチームに戻ってからはチームでの連携や、守り勝つ試合運びを想定した練習をメインに取り組みました」
「テーマは明確で”ロケットスタート”。Baseball5は展開が速く、一度傾いた流れを動かすのは難しいスポーツです。ゲームの流れを先に掴めるように、打撃は一打席目、守備は一つ目の打球、この一球に120%の力を発揮できるような準備に時間を使いました」
迎えたジャンク5との一戦は2-0で勝利。計10イニングで失点は1のみと、日本代表選手も多く出場した相手に得点を許さなかった。小暮は試合を振り返り、
「昨年の我々はミスから失点が多く、相手有利に試合が進んでいたので思い通りにならなかったですが、今年は失点が少なく有利に試合運びができたので、そこが勝負の決め手になったと思います」
と、方針通り守備から主導権を握った試合となった。
「初戦の大一番をなんとか切り抜けた次の試合、チームの気が緩みやすく、負けてしまうことはよくあります。だからこそ、『集中して行こう』『気合い入れて行こう』とより意識して試合へと入りました」
試合はフルセットまでもつれたが、最終セットを5−2で制し決勝へと駒を進めた。
ワールドカップで代表コーチを務めた中濱瑞樹や元巨人選手の黒田響生、そして読売ジャイアンツ女子チーム所属で22年にはBaseball5でも日の丸を背負った田中美羽らが出場した。
「1セット目を取った後、チームで明らかに"疲れ"を感じさせるプレーが増えました。私自身もそうでした。だからこそ3セット目が始まる前に、『最後の最後、試合が終わるまで疲れは見せないようにしよう』とチームで約束しました。選手達全員疲れはピークだったので、最後は気力勝負でした」
最終セットは5STARsが着実に走者を進めながら点を重ね、スコアは10−1。快勝で締め、選手権初優勝を決めた。
両MVPが語った自身と感謝
ワールドカップで日本と優勝を争った発祥国キューバの大使館から、ダイロン・オヘダ 一等書記官が駆けつけた。
金城は3試合全てで打率5割以上をマークし、守備では昨年から挑戦したというミッドフィルダーとして相手の目の前に立ちはだかった。
「大きな波がなく高いアベレージでプレーができました。5STARsの得点源という自覚はあるので、とにかく出塁ができて良かったです。
守備に関しては準決勝と決勝で、相手の進塁打をノーバウンドでキャッチしてダブルプレーというのもあり、ゲームの流れが大きく変わりました」
と自身も手応えを述べた。続けて、
「初戦(ジャンク5)の一打席目にしっかりヒット打てたことは大きかったです。緊張は一切なく、ライバルとのひとつひとつの勝負を楽しめたことがMVPという結果に繋がりました」
と上で述べた”ロケットスタート”を大一番で発揮できたことが要因となった。
「間違いなく仲間の存在が大きいです。大会前に悩んでた時でも声をかけてくれた仲間がいて、監督・コーチも一緒に練習に付き合ってくれた。
さらには中学生選手達もチームが勝つために共に一生懸命練習してくれて、応援もしてくれた。全員で勝ち取った優勝なので本当に嬉しいです。MVPを頂けた事は大変光栄で嬉しい事ですが、仲間への感謝が大きいです」
「梅林(遼太)さんが試合に向けてコツコツと一生懸命に練習する姿勢には本当に刺激を受けました。私だけではなくチームみんなの良い刺激になっていたと感じます。その梅さんが試合で大活躍だったのがとても嬉しかったです」
Baseball5がさらに広がる2025年は、熱狂から幕を開けた。
(おわり)
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