黒田が苦しみを乗り越えて得たもの=2011シーズンを終えて

山脇明子

シーズンを終えて涙 「精神的にしんどい」日々も

序盤は勝ち星に恵まれなかった黒田だが、8月に5勝を挙げるなどメジャー自己最高の13勝をマークした 【Getty Images】

 今季最後の試合を終えて、ドジャースの黒田博樹は涙を流した。36歳の黒田にとって、長く、つらく、我慢を強いられたシーズンだった。そして、苦しみのどん底から見事にはい上がった。
 5月半ばから2カ月半、好投しても勝てない登板が続いた。クオリティースタート数を重ね、防御率は下がる一方だった。だが、打線の援護に恵まれず、増えるのは黒星ばかりで、「精神的にすごくしんどい」日々だった。

 その時、黒田は言った。
「肉体的には毎年、中4日、5日で回るということはしんどいし、体のケアなり、コンディションを整えるということは、この4年間変わらずしんどいことだけど、それ以上に良い投球をしてもこれだけ負けが付くというのは……。でも精神的に強くなるために良い試練と思ってやりたい」

チーム残留とツキが変わった8月

 7月末のトレード期限を前に、黒田はプレーオフ進出の可能性があるチームから興味を持たれていた。ドジャースのネッド・コレッティGMも、黒田に拒否権があるトレードに対し、本人が望むならば話を進める方針を固めていた。「黒田には来季また(FAとして)戻ってきて欲しいという気持ちに変わりはない。でも(今は)彼に勝たせてやりたい」という同GMの思いからだった。 

 結局、黒田はドジャース残留を決めたのだが、トレード騒動で揺れた同期間は黒田にとって「救われる」期間でもあった。

「普通に勝ち負けの数字だけ見れば、僕は名前が挙がるような選手じゃないが、自分の信念を持ってしっかりやっていれば評価してくれるところがあるというのは救われるところだし、それがないとどちらかというとモチベーションを保つのが難しい。多少なりとも自分が今、精神的に強くいられるのは、そういう部分があるからかもしれない」
 そう話した時の黒田の成績は6勝12敗。黒星は白星の倍になっていた。だが、負け数が13敗になった後、ドジャース残留を決めた黒田のツキが変わった。8月は6試合に登板して5勝をマーク。最終的には今季の勝ち数をメジャー自己最高の13勝(16敗)とし、防御率も最高の3.07をマーク。2年連続で最後までローテーションを守り、4年目で初めて200投球回をクリアした。

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著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

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