イチロー検証<その2>:言葉から読み解く2011年

木本大志

開幕序盤、イチローはチームとともに好調。4月は39安打をマークした 【Getty Images】

 イチローの2011年シーズンも残すところあと数試合。

 7月に入るまでは勝率5割前後をキープし、地区の優勝争いをしていたチームは、7月6日(現地時間、以下同)から17連敗を喫して、圏外へ脱落した。

 イチローはといえば、相性のいいはずの5月に打率2割1分と低迷し、それが11年連続のオールスター出場を逃す要因ともなったわけだが、その後も数字は伸びず、3割、200安打も絶望的。

 そんな特異なシーズンの節目節目で、彼はどんな言葉を残してきたのか。そこから、マリナーズとイチローの1年を振り返る。

200安打は確実に見えた4月、例年と意識の違いも

「別の思いも入ってくる年でもあるので、それは違う」

 開幕前日、開幕を迎える思いを聞かれ、イチローは、意味深な言葉を残した。“別の思い”について聞かれれば、「それはもう察していただかないと」と返したが、震災からまだ1カ月もたたない中での開幕。それを意識した言葉であろうと想像できた。

「今年のチームはまだ2試合しかやってないですけど、足の速いというか、足の使えるランナーが多いですから、やっぱりこう、打席の中で意識はちょっと変わりますよね。抜けなきゃいけないと思うのと、なんとか当てれば、という思いとは違いますから、そういう幅はあの打席でもありました」

 マリナーズは開幕から2連勝。同点で迎えた9回、1死一、三塁で打席に入ったイチローがファースト内野安打を放ち、チームを勝ちに導いた。このとき、三塁からジャック・ウィルソンが本塁へ好走塁を見せ、一塁走者だったミゲル・オリボも三塁へ。マリナーズは足で相手守備をかく乱した。

「正直言うと、ここ数年、あんまり頭にない、その数のことは。それはまあ、明らかに違うよね、今までとは。まあ、10年やって、それをそんなに意識をしなくてもいい権利を得たというか、そういうちょっと価値観はある」

 4月、自己最多タイの39安打。これまで、修正するポイントがぼやけるためか、「4月に打ち過ぎるのは、あまりよくない」などと話してきたが、今年はもう「そういう意識はない」とスタンスの違いを明確にした。
 この時点では、今年も200安打達成は疑いのないものに見えたのだが……。

チームへの手応えと確信を口にした序盤

「そりゃあ、しんどかった、今日なんかも。昨日もそうだけど。なかなかそういう勝ち方っていうのは昨年もなかったし、あのままズルズル逆転されれば負けて、今日なんかでも、必ず点取られて負けるパターンだったことを考えれば、違う形はできているのかなあ、とは思う。まあ、そうであって欲しい」

 同じ4月の最終日、接戦をものにして5連勝を飾り、チーム状態も上向いてきた。イチローはまだ、確信をもって今年のチーム状態を語ることはなかったものの、徐々に手応えを感じているようだった。

「(シーズンが)始まる前によく言いますけど、結果を出すことで自信をつける、という段階だと思うので、それを重ねていくしかないですね。それ以外では多分、自信をつかめないので」

「まだ(試合を勝つ)オプションは少ないですけど、いくつかはある、という感じにはなって来ているんじゃないですか」

「これまでになかった形、特に昨年までと比べるとなかった形がたくさん見えてます。攻撃側も、それはプラス材料だと思いますね」

 すべて、5月5日のコメント。レンジャーズとの3連戦に勝ち越しを決め、4月の最後に口にしたよりも、少し踏み込んだ形で手応えを口にした。

「3点のリードで絶望的になる感じではないからね。いやだけど、そこはちょっと昨年の感じとは違う」

 やがて若いチームの自信も形をなし始め、5月18日から6連勝。23日のツインズ戦では、7回で3点をリードされていたが、逆転勝ちを収めると、イチローの口調は、より確信に満ちた。

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