Krushの仕掛け人、格闘技業界を斬る!=特別インタビュー

t.SAKUMA

「生き残るためにはK−1ルールのKrushをやるべきだと」

名勝負を数多く生み出す宮田プロデューサーの“興行哲学”とは? 【t.SAKUMA】

――競技ではないですか。

 自分は競技という言葉は一生使わないと思いますよ。Krushは自分にとって興行です。競技として正しいと言われることをやったとしても、それで選手がピーピーしていてはダメだと思うんですよ。僕はKrushにたくさんのお客さんを集めたいし、そのためにはお客さんにわかりやすく見てもらわないといけません。そこは一昨年にグッドルーザー(自身が代表を務めるKrush主催会社)を起ち上げるときに考えました。キックボクシングもやりたいけれど、いま生き残るためにはK−1ルールのKrushをやるべきだと。

――宮田さんは、他団体のキックボクシングを見に行ったり、他団体で気になる選手はいますか。

 Krushの選手が他団体に出るので仕事で行くことはありますが、それ以外で見ることはまずないですね。ただ、今度の新日本キックの石井(宏樹)選手の試合(10月2日、ラジャナムダンスタジアム王座戦)は見に行きたいと思っていますよ。チケットを買って。石井選手のキックボクシングを貫く生き方も含めて、彼が今度の試合でどのような戦いをするのか興味がありますね。伊原(信一)代表の世界も好きですし。

――よく選手に対して名勝負製造器という言葉を使用しますが、宮田さんこそ名勝負製造器そのものではないかと思います。それくらい、多くの名勝負を生み出してきたと思うのですが、なにか秘訣のようなものはあるのでしょうか。例えばマッチメイクとか。

 マッチメイクは流れでやっているだけです。やはりジムさんとの付き合いもありますから、「この選手を使ってくれよ」とか言われることもありますが、最終的には、お客さんの方を向いてやっている(組んでいる)かどうかじゃないですか。結局は、お客さんを驚かすようなことをしていかなきゃダメですから。ただ、試合内容に関して言うなら、選手に助けられたことは全日本キック時代から多々ありますね。全日本キックの選手って団体愛があったじゃないですか。ここでオレが盛り上げる。ここで死んでもいい、じゃないですけど。だから、そういう選手が所属するジムさんとの繋がりというのも重要なんですよね。

――大会における試合数の配分、ライトや煽りVなどを使った演出も含めて過去の全日本キックやKrushには心地よいリズムを感じます。興行をやる上で気を付けていることはありますか。

 当たり前のことを当たり前にやっているだけです。尺に関していえば、僕自身が長時間の興行を見るのは疲れてしまうので。だからといって、1時間で終われば良いという訳ではありませんが。興行って様々なことがありますからね。例えば、前日の計量で何か手違いがあったりしたら、それだけで選手の気持ちもズレてくるし。大会でも、前半の試合で選手が入場時になかなか出てこなかったりするのは苦痛ですよね。あの選手の曲はここから盛り上がるって分かっている場合はいいですけど。そういうのはやめるべきだと思いますし、それは選手に伝えますね。昔のプロレスではないですが、前座が大技をださないとかと同じですよね。良いあんばいってあるじゃないですか。サクサクいこうよと。ぞんざいに扱っているわけではありませんよ。

――その“良いあんばい”というところが、過去の全日本キックやKrushの興行に表れているように思います。

 やはり、僕にとっては全日本プロレスというプロレス団体に入ったことと、全日本キックという興行会社に入ったことが良い経験になったと思いますね。全日本キックと他団体が違ったのは、ジムの代表が主催している団体ではなく、興行会社としてあったということですね。その部分でいろいろと勉強できたと思います。

宮田氏イチオシのプロレスラー

今、プロレス界で最も熱い視線を浴びるKENSO(後方)は、天然キャラ曹駿とまさかの合体 【t.SAKUMA】

――やはりプロレス界の影響も多分に受けているのですね。

 プロレスの興行って無駄がなくできているんですよね。僕は今でもプロレスを見に行きますし、週プロも見ていますよ。格闘技よりプロレスを見に行く方が多いかもしれません。

――それでは、今一番見に行くプロレス団体はどこですか。

 全日本プロレスですね〜。こないだも行ったばかりです。今はKENSOですよ!

――KENSOですか!

 KENSOですよ〜! KENSOの面白さはかなり以前から気づいていましたよ。まだ、会場がKENSOに静まりかえっていた頃から、1人で拍手していましたから。KENSOはワクワクしますね。何を見せてくれるんだろうって。今度は曹駿(そうしゅん)と組むんでしょ? いびつでいいですね〜(笑)。

――かなり面白い組み合わせですよね〜(笑)。ところで、宮田さんはスマッシュにもスタッフとして関わられていますよね。

 いろいろと勉強させてもらっていますね。スマッシュは予備知識がなくても楽しめるというのもありますし。ファンの雰囲気がいいですよね。お客さんを選ぶことはできませんが、やはりお客さんの雰囲気というのは大切だと思いますね。初めて後楽園ホールに行く女性ファンが引いてしまうような会場の空気は良くありませんよね。

――格闘技会場でよく見かけるのが局所的に盛り上がっているという光景です。つまり、選手の友人や知人が盛り上がっているだけという場合です。でも、過去の全日本キックやKrushは会場全体が盛り上がっていることが多いですね。

 もちろん、選手を応援する友達や知人にもたくさん来てもらいたいです。ただ、たくさん手売りする選手が必ずしもリングに上がれるということになってしまうと良くありませんね。自分が見ていてつまらないなら、お客さんもつまらないだろうし。どこを向いてマッチメークしているのかってことになりますから。

――なるほど。ところで選手に対してチケットノルマ的なものはあったりするのですか。

 僕はこの仕事をやっていてノルマ的なことを課したことはこれまでに一度もないですね。おかげ様で、毎大会にわたり選手賞を出して下さるKrushリングサイドクラブさんとか、協賛のスポンサーさんが増えていたりで助けてもらっている面もあります。お金は一番大事ですし、僕の仕事もお金が8割ですから。営業が一番大変です。ただ、Krushは悪くないファイトマネーを選手に出しているとは思いますよ。そういうことを含めて、Krushに出たいという選手が多いという結果にも繋がっていると思います。

3/4ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント